「酔いと共に遠くへ過去へ行く」冬の猿 talismanさんの映画レビュー(感想・評価)
酔いと共に遠くへ過去へ行く
ジャン・ギャバンの声、台詞、演技に感動しました。そしてまだ20代のベルモンドが受けてたったきれいで自然な芝居は最高でした。ギャバンの台詞からは自分の目の前に広い広い揚子江が浮かび上がり、ベルモンドのフラメンコ・ステップと車相手の闘牛士ごっこからはスペインの太陽を感じることができた。台詞の一つ一つがすばらしかった。
戦争、ドイツ兵、空襲、地下室、ナチス占領下の海辺の町、雨が多くて曇りがちの寒そうな町。兵士としてでも旅した土地、遠い国での思い出や見たこと経験したことを作り話も含めて語ったり思い出すのは、お酒の酔いと共に。そこに同じお酒を飲む相手がひとりいてくれれば何時間でも語って飲み続けることができるだろう。翌朝は後悔したり恥ずかしい気持ちになるけれど。酔っ払い人間には悲しい黒い色が自分の中にポチッとある。酔っ払いの演技は普通に歩くのと同じ程難しいだろう。二人の酔っ払い具合は筆舌しがたい程うまかった。そして酒を飲む代わりに飴玉を口に放り込むギャバンから目が離せなかった。
猿顔と言われたというベルモンドが本当に可愛らしく美しくさり気なくお洒落で、そこに居るのはまさにフーケという、昔の恋人を今でも思い、寄宿舎で仲間はずれにされている10歳の娘を愛する一人の若い男以外の何者でもなかった。沢山の打ち上げ花火はモノクロであることで余計に頭の中の花火を美しくしていた。
おまけ
ベルモンドは運動神経抜群だがダンスはそうでもないのかもしれない。フラメンコ・ステップ場面ではベルモンドの上半身と下半身を別々に映していた。「アマゾンの男」でベルモンドがタップダンスを披露する箇所があって、その時も上半身と下半身分けての映像で当時67歳なので脚部分はダブル・スタントなんだろうと思った。「冬の猿」のベルモンドは28~9歳だから年齢の問題ではないんだろう、多分!
talismanさんへ
ジャン・ギャバンの映画なんて、数えたら片手で足りるほどしか見てないw
土日、またベルモンド・シリーズを2本見てきました。ジャン・ポールが斎藤工にしか見えない症候群発症中ですw