「映画業界全体への愛と賛歌」ブギーナイツ あき240さんの映画レビュー(感想・評価)
映画業界全体への愛と賛歌
一言でいうとポルノ映画業界で働く人々の物語
だけども決してドギツイポルノシーンは無い
局部のアップや行為そのものを期待してみたとしたら全くの肩透かしだろうから女性が観ても大丈夫
ラストシーンでポロリが初めてありますが、モザイクがかかってます
安心?してご覧下さい
本作のテーマは映画業界全体への愛と賛歌だ
その意味で本作は、イブの総て、サンセット大通りに連なる系譜の末裔というべきかも知れない
いや、それよりもトリュフォー監督の「アメリカの夜」になぞらえる方がふさわしいかも知れない
一般人からすれば映画業界は夢の世界
その業界を描くにあたり、より等身大で身近に描こうと敢えてポルノ映画という映画業界のヒエラルキーの最下層を舞台に選んだものだろう
ポール・トーマス・アンダーソン監督の映画への愛は、本作の登場人物のポルノ映画監督の言葉が代弁する
これからはビデオの時代だ、フィルムはやめてビデオで撮れと言われて、強く反発する
そんな安物の映像を撮れるかと
また別のシーンで、ポルノはポルノだが、俺は観客が性欲解消が終わっても最後まで観てしまうドラマが面白い映画を撮りたいんだと力説する
確かに底辺
それなりの人間ばかりの世界
それでも皆、プライドを持って「仕事」をしているのだ
素人出演企画で、監督や女優を素人が見下した時、切れてしまい暴力を振るってしまう
それほどの矜持をもってより良い作品作りに彼らは日夜打ち込んでいるのだ
それはハリウッドのお上品な映画と変わりはしなのだ
時代を感じさせるテクニックとして、当時のヒット曲がてんこ盛りで使われているのが楽しい
初めの1977年はディスコもので始まり
次第に曲もかわり終盤の1980年代の半ばとなると、アメリカ版歌謡曲として蔑称される産業ロックに変わっていく
これもディスコは体を動かして皆で楽しむ音楽であり、映画でいえば映画館で皆と観るフィルム映画なら、産業ロックは使い捨て消耗品のビデオ作品がうける時代と世の中が移り変わってしまったことの表現だ
そして監督と喧嘩別れして、産業ロックを歌って一山当てようとした主人公達は上手くいかず、結局ポルノ映画監督の元にかえるのだ
舞台はロサンゼルス、サンフェルナンドバレー
ハリウッドの北側、ポルノ産業が集まっている地区
マグノリア通りは、ハリウッドとの境になる辺りの通りだろう
ポール・トーマス・アンダーソン監督の映画への愛が強く伝わる作品であった
そして、その監督の次回作はマグノリアであった
最後にタイトルのブギーナイツの意味
普通に夜毎のどんちゃん騒ぎ的な意味だ
しかしディスコ音楽好きなら、1977年のヒートウェイブというグループのヒット曲、ブギーナイツから取られたものかと期待してしまう
しかし全く関係ないようで、その曲は劇中で掛かりもしなかった