劇場公開日 1993年7月24日

「トランプ人気の原点のような」フォーリング・ダウン くまぷうさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5トランプ人気の原点のような

2024年11月6日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

悲しい

物語の中心は、失業して気落ちした男性が自分の娘の誕生日を祝うために、離婚した妻の家に向かうという、1970年ぐらいまでのアメリカ映画だったら精神的な危機に陥った男性が娘と会うことで自己を再生させる感動の映画になっていたと思う。だけど1993年のアメリカ映画の男性主人公は、韓国系アメリカ人やラテン系の若者たちといざこざを起こして完全に心が折れてしまう。
今のトランプ人気を予感させるような主人公。普通の白人男性の絶望を的確に描くために、その後も主人公はハンバーガーの店や工事現場やゴルフ場で不快な体験をする。たぶん、1993年の日本人より2024年の日本人のほうが、この映画の主人公に共感できてしまう。
普通に生きているのに周りから下に見られているような感覚、いつのまにか自分の国に違和感しか感じなくなっている感覚、この主人公の孤独と疎外感は白人のアメリカ人男性でなくても、世界中に共感できる人がいると思う。
そして、この主人公にトランプ支持者が重なって見えると思う。この主人公を追う刑事は初老の男性で、古き良き時代のアメリカの白人男性を象徴するキャラなのだろうが、たぶん映画を見ている人の七割はこの善良な刑事に今のアメリカの社会問題を理解していないと感じてしまう。
この映画に日本も同じだけど今の社会の対立の原因が表れている。

くまぷう