「やり直そう、と彼は言った」ブエノスアイレス abokado0329さんの映画レビュー(感想・評価)
やり直そう、と彼は言った
ウォン・カーウァイ監督作品。
ウィンは「やり直そう」という。彼は魅力的だ。凄くアプローチをしてくれる。愛してくれているとも感じれる。だけど彼には配慮はない。愛は容易に暴力になり得る。病気で寝込んでいるファイに、料理を作れなんて言う始末だ。それでも二人は付かず離れず共にいる。束の間のダンス。倒錯した愛。
ブエノスアイレスの物語は、香港の出来事とも表裏一体だ。それは反転させた香港の情景が映し出されることで示唆的である。
中国本土は「やり直そう」という。彼は魅力的だ。経済的に成長しているし、男らしい。凄くアプローチしてくれる。愛してくれているとも感じている。だけど彼には配慮がない。愛は容易に暴力になり得る。一つになった時、香港の自由は奪われる。要求は激しくなる。そんな不安がありながら、中国本土と香港は付かず離れず共にいる。束の間のダンス。倒錯した自由。
フェイは一人旅をしているチャンと知り合う。彼らの愛ももちろん時限つきだ。だけど彼との愛は、ウィンとの愛とは違う。性愛ではなく、友愛と言えばよいのだろうか。
チャンは調理場の掃除をするように、フェイを気遣い、フェイもまたチャンを思いやる。対等で尊厳に満ちた愛なのである。
しかしその愛は記憶されない。フェイの愛のメッセージが記録されないように。
チャンは世界の果てに行ってしまう。だけど彼はいつでも香港に戻ってこれる。それは香港との関係を断ち切れないことも意味する。フェイとチャンがダンスをすることはあるのだろうか。あり得ると信じたい。イグアスの滝でひとり待っている。激しく水は穴へ落ちていて、美しい。
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