劇場公開日 1964年9月12日

「恋から愛に変わる女性の健気さが胸を打つ恋愛映画の時代が生んだ特殊性」ブーベの恋人 グスタフさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5恋から愛に変わる女性の健気さが胸を打つ恋愛映画の時代が生んだ特殊性

2020年4月17日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD、TV地上波

第二次世界大戦の荒波に翻弄されるパルチザン活動家ブーベを愛するマーラの女心に焦点をあて描いた恋愛映画の佳作。一度は諦め掛ける裁判の行方を期に愛に立ち向かうマーラの、前半と後半の変貌を鮮やかに演じたクラウディア・カルデナーレの美しさと表情の演技が素晴らしい。ふたりが裁判所の廊下で対面する場面でブーベを叱咤激励するマーラは、すでに母性愛を含む女の情愛に変化している。ラストシーンで、時代が許すなら本来結ばれていたであろう青年に呟くマーラの言葉に、女性だけにある人間の強さが表れている。
カルロ・ルスティケッリの悲哀を帯びたテーマ曲がマーラの実直さを表現していて、こころに沁みいる名曲。ルイジ・コメンチーニ監督は多才ゆえの作風が固定しない欠点があるが、この作品では特に後半のデート場面の演出は揺れ動くマーラの心理を映像として巧みに描く。
中学時代の忘れられない衝撃の、自分にとって唯一無二の大切な恋愛映画。

Gustav