「自分が害虫になった気分を味わいたいなら、最適な一作。」ファンタスティック・プラネット yuiさんの映画レビュー(感想・評価)
自分が害虫になった気分を味わいたいなら、最適な一作。
『JUNK HEAD』と合わせ技で観たら、しばらく悪夢のネタには事欠かないかも、と思わせてくれる作品。作家の狂気にも近い執念と情熱、そして美しくも怪奇な作品世界を現出させたという点でよく似た二作品が、こうして日を置かずして公開されるとは、なかなかな巡り合わせです。
本作は1973年制作の作品ですが、オリジナルネガをデジタル修正した恩恵か、色彩は非常に鮮明で、わずかにピントがずれる箇所を除いては、映像からはほとんど古さを感じません。それだけに、一枚一枚手描きというローラン・トポールの絵の美しさ、奇怪さをダイレクト味わうことになります。
とりわけ印象的なドラーグ族の赤くて丸い目でじっと見つめられると、もう見つめないで!と思うけど、意識がどこかに飛んでいって白目になられても、やっぱりこわい!惑星のあちこちにいる生物も、ボッシュの宗教絵画のような不気味さはあっても、じっとしてたらどこかかわいらしさがあるのに、動き出した途端に圧倒的にグロテスクさが勝ってしまう。コミカルさと緻密な描き込みの悪魔的なバランスが生み出す不自然な感覚を、楽しいかどうかは別にして、結末まで思う存分味わえます。
ドラーグ族に囚われた少年を主人公にした物語の枠組みは、意外にすっきりと分かりやすく、仮に字幕がなかったとしてもそれほど内容理解は難しくなさそうです。だから遠慮なく、ルネ・ラルー監督とローラン・トポールの世界に浸ることができます!
ラルー監督は前作『かたつむり』(1965)でも巨大カタツムリに人間を襲わせてるけど、人間を踏み潰したいという願望でもあったのかな…。
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