「きしょい…」ファンタスティック・プラネット とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)
きしょい…
造形はオリジナリティにあふれている。1度目にしたら忘れられない。
絵のタッチは“諸星大二郎”氏を彷彿とさせる。
そして何とも言えない柔らかい色調で弾きつけられる。
派手な動きもなく静かに進む。絵本のようだ。
音楽も独特できわめて印象的で、その不協和音的な取り合わせが、この映画を唯一無二の作品としている。
そんな映像・音楽で、ドラーグ族とオム族を中心に展開し、この星の生物の生態が差しはさまれる。
愛情と貪り食らうが同居している世界。愛玩具なんて生易しいものではない。
卵からかえった幼体の背中をなめる成体。幼体は気持ちよさそうに体をゆだねるが、次の瞬間には捕食されている。愛の描き方が全編通してこんな感じ。
単に造形が気持ち悪いのではなく、その描かれている愛情の感覚が気持ち悪い。可愛がりつつもなぶり殺し、食ら尽くすという感覚が気持ち悪い。ドラーグ族がオム族にと、異種族同士なら、まだ目を背けるだけで、ーードラーグ族を人間に、人類をネズミ(ハムスター)・昆虫に置き換えれば、私達も同じことをしているんだよなと反省しつつーー鑑賞するが、同族間の中での捕食。しかも愛撫した後に…。
この生理的感覚レベルでの気色悪さは何なんだ。
主筋の方は、いろいろな地域の歴史、他の映画を思い出しつつ、解決の仕方が独特で唸ってしまう。
惹きつけられるけれど、同時に嫌悪。
再鑑賞したい、したくない、したい、したくない。逡巡してしまう。
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