「今の時代だったら、このタイトル名は無かった?」陽のあたる場所 KENZO一級建築士事務所さんの映画レビュー(感想・評価)
今の時代だったら、このタイトル名は無かった?
この作品、話はシンプルで、
若い頃の鑑賞では主人公の思索に
思いを寄せることも出来なく、
印象の強い作品では無かった。
しかし、青春時代も遙か遠くになった今、
再鑑賞して自分を主人公に置き換えると、
新たな気付きに
何かと考えさせられる作品だ。
成り行きからして、
主人公は令嬢と上流社会での生活を諦めて
職場の彼女との人生を全うすべきと
断ずるのは簡単だ。
しかし、今回の鑑賞では、
自分にそんな選択が出来るのか自信が
無くなるような重い内容に気付かされた。
序盤での、主人公の昇進を知らせる電話を
母親が受けた後に、主人公と令嬢の
ダンスシーンを重ねた映像は、
信仰からはみ出しつつある息子への不安と
破綻を予感させて秀逸だったが、
もし私が主人公と同じ立場だったら、
目の前の美人の令嬢と
セレブ社会が待ち受けている中で、
誘惑に駆られて選択を誤らないか、
“心の殺人”を犯さないか、に対し
自信が持てない自分を見出すばかりだ。
また、この作品を観ながら、
遠藤周作の「わたしが・棄てた・女」の
原作から大幅改変した
浦山桐郎監督版「私が棄てた女」が似た設定
だったな、と思い出されると共に、
原作に近いと言われる
熊井啓監督版「愛する」が観たくなったりと
余計な思いが錯綜した。
ところで、少し前に
「ポセイドン・アドベンチャー」を観たせい
もあってか、泳げなく湖水で溺死してしまう
職場の恋人役のシェリー・ウィンタースが
あの映画では泳ぎの上手い太ったおばさん役
だったとは、この映画を受けての
逆説的配役なのかと想像してみた。
また、モンゴメリー・クリフトは
「私は告発する」「地上より永遠に」等々、
かなりの作品で“悩める男”を演じていた
イメージがあるが、早世した彼が
もし悩める壮年期・高齢期を演じていたら、
どんな人生観を我々に見せてくれていたかと
想像すると少し残念な思いがする。
一方、ジョージ・スティーヴンス監督は
この後「シェーン」「ジャイアンツ」等々、
名作を連発していくことになりましたね。
さて、このタイトル名、
今の時代だったら無かったのでは。
格差格差は今でも継続しているが、
多様性の価値に気が付いている現代では、
高所得者層社会だけが
“陽のあたる場所”では無い
と認識出来ているはずだから。
KENZO一級建築士事務所さん
本来の恋人役の女優さん、映画「ポセイドン・アドベンチャー」で水泳の得意な女性と同じ方とは👀…驚きです!早速ネットで画像検索しました😅 人生の変遷を感じました。