「【1986年の作品を2022年に観るからこそ勝手に騙される面白さがあるのかもしれない】」ヒッチャー(1986) 3104arataさんの映画レビュー(感想・評価)
【1986年の作品を2022年に観るからこそ勝手に騙される面白さがあるのかもしれない】
・1986年公開のアメリカのサイコ・サスペンス映画。
・AmazonPrimeで検索した時に、2021年と記載されていたので「あれ?1986年では?」と思ったのですが、どうやら、2021年にリバイバル上映されたようです。
・アルバイトで車を長距離陸送する主人公の青年ジムが、大雨の中、車を陸送中に一人のヒッチハイカー(自らをジョン・ライダーと名乗る)を拾うのですが、目的地を訊いても答えずに静かに茶化すだけ。そのまま車を走らせると、何もない場所で停止している車を見つけたので、再び止まろうとするジムに「止まるな」と命令し、ジムのアクセルを踏む足を手で押して車を走らせようとするジョン。不可解に思いその理由を尋ねると「さっきヒッチハイクした車。持ち主の手足、頭を分解したからもう歩けないよ。君もこれからそうなる」という趣旨の恐ろしい答えが返ってきた。それをきっかけにジョンから逃げるジムの話が始まる。途中、ジョンは他の人をどんどんと殺していくが、警察に殺人犯として疑われるのは逃げているはずのジム。一体どういうことなのか。ジョンとはいったい。 という大枠ストーリー。
[お薦めのポイント]
・絶妙なフェイクで観客の混乱を誘う(もしかしたらフェイクしている気がないのかもしれませんが笑)
・真相を、結末を観たくて目が離せなくなります。
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[物語]
・言い過ぎてしまうとネタバレになってしまうので控えますが、恐らく、サスペンス好きの人ならば中盤辺りに「なぜジョンではなく青年ジムが警察に追われているのか」という疑問に対して「ある結論」を推察すると思います。しかし、その推察に対する根拠の決定打もなく物語が進んでいくと「では一体どういう状況?思わせぶりなフェイクか?」と混乱させられると思います。その先の結末は、観てのお楽しみ、という事で。笑
・個人的には、「想像の風呂敷を広げられたわりに、割と単純な終わり方」で肩透かし感をくらいました💦が、もしかしたら、勝手にこっちが想像を膨らませただけで、制作者の意図はなかったのかもしれませんので、自己中な肩透かしかもしれません。笑 にしても、そのような想像を膨らませる幅を持たせてくれていたので、最後まで「で結局真相は?結末は?どうなのよ!」と目が離せなくなりました。そういう意味ではしてやられた(引き込まれた)物語でした。
[演出]
・映画「激突」のような緊迫感もありつつ、それだけではないんです。一旦、気持ちを緩ませたところで、ホラーのようにズズズゥーっと恐怖が追いかけてくるような物語の構成や演出。緩急がしっかりしたサイコ×ホラー×サスペンスと言っても過言ではないかと。
[映像]
・1980年代の映画なので、もちろん映像は粗目です。でも、物語や演出・演技のおかげで、2022年現在もなんの問題なく物語に没頭できました。
[音楽]
・舞台が何もない田舎の一本道。時おり、モーテルやドライブインなどがある程度。何もない寂しさの中で、サイコなキャラクターに追われる状況を、余計なBGMを省いて表現することで、その世界に没頭できた気がします。音を極力省くことも意味のある演出だなぁ、と改めて感じました。所々、差し込まれるBGMは1980年代のサスペンス~って感じの曲目でした。それもまたある意味雰囲気があってよかったです。
[演技・配役]
・ジムを演じる「C・トーマス・ハウエル」さん、ジョンを演じる「ルトガー・ハウアー」さん。どちらも凄い!ばっちりの配役だと思いました。
・トーマスさんは、最初は本当にしがないアルバイターにしか見えないのですが、後半になるにつれて、かっこよい青年に見えてきます。たった100分程度の映画の中でこうも最初最後の印象が異なるように魅せる演技は(もちろん演出も)やはり素敵です。
・一方、ルトガーさんは終始不気味な人を演じきってくれています。でも、よくあるサイコ映画のように「ただ不気味で不死身」な感じとはちょっと違うんです。どこか人っぽさも混じっていて、内に秘めたサイコな部分はぱっと見では表面に出ていないのですが、ちょっとのぞき込むとサイコが渦巻いている感じ?よくあるサイコパス像とはかけ離れた人物を演じられている気がして、感じたことのない恐怖(≒見ごたえ)を感じました。いやぁ、最後まで謎なキャラでしたが、その演技は凄かったです。
[全体]
・色んな思考を張り巡らせながら、恐怖に震えながら、緊迫感にドキドキしながら、約100分間を愉しませてもらいました。オチは賛否両論あるかと思います。世の中では、どんどん色んなサイコ映画、サスペンス映画が生まれているので、結論付けに対する求めるものも増えてきているからです。同じ土俵で1980年代の映画を評価してはならないとは思いつつ、鑑賞するとどうしても期待してしまうものですね💦 ただ、その部分を差し引いても、見ごたえのある映画だったと思いますし、むしろ観客の目が肥えてきた今だからこそ「勝手にフェイクにハマれる」面白さとなっているのかもしれません。
・まずは、100分間のハラハラ、ドキドキ、どうなるの?を単純に楽しめるエンタメ作品として、一度鑑賞されてみてはいかがでしょうか。ありがとうございました。
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