「リバイバルのおかげで改めて知った本作の美しさ」ヒッチャー(1986) 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)
リバイバルのおかげで改めて知った本作の美しさ
なにせVHS時代の映画であり、テレビのロードショー番組で観た印象が強かったので、これほどまでに撮影の美しい映画だったのかと改めて気付かされた。
世の中には理由の有無に関わらず酷い暴力は存在していて、いつなんどき晒されるかわからないというテーマ性は、最近ならS・クレイグ・ザラー監督などに受け継がれている。決して短絡的なジャンル映画でないことはわかっていたつもりだが、『刑事ジョン・ブック 目撃者』でハリウッドデビューしたばかりのジョン・シールが撮影監督を務めたこともあって、ルックとしても妥協のない一級品に仕上がっている。B級のカルト作とは趣きが違う、堂々たるアート作品だと思う。
本作の立案者でもある脚本のエリック・レッドの監督作『ジャッカー』もドライブを主軸に置いたとても好きな映画だが、レッドも本作の監督ロバート・ハーモンも、その後のキャリアで本作を超えたとは言い難い。素材、演出、撮影、演技、すべてが揃ったことで、関わった誰もが思っていた以上のものが生まれてしまったのではないか。まさに映画が起こした奇跡のひとつだと思う。
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