劇場公開日 1958年6月6日

左きゝの拳銃のレビュー・感想・評価

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2.0「奇跡の人」との出来の落差には驚かされるばかりで…

2025年7月9日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

アーサー・ペン監督の傑作「奇跡の人」が
この作品の失敗から生まれたとのネット記事
もあり興味深く鑑賞した。

米国内での不評に加え、キネマ旬報でも
何の評価も得られなかったようだが、
「奇跡の人」と何が異なるのか、
また、NHKの放映でも、
あえて制作順番とは入れ替えて放映した狙い
もあったのだろうと思い、
そんな興味もあり放映順に鑑賞してみた。

さて、実際に鑑賞してみて、
確かに、「奇跡の人」との出来の落差には
驚かされるばかりだった。
冒頭は宗教の観点や
人格者である牛飼いのリーダーの存在から、
ビリー・ザ・キッドの単なる殺人鬼とは
異なる視点での展開が期待されたが、
少しは彼の苦悩や理由付けはあったものの、
結局は残虐な殺人鬼に終始する人物像にしか
感じられない描写が続いた。
そもそもが、
登場人物一人一人の関係の説明や、
ボスは殺害されたものの牧童グループの
牛売りの話はどうなったのか、
その中の3人がどうそのグループから抜けて
復讐に走ったのか等々、話の展開の整合性に
おいての未整理なバラバラ感が気になり、
脚本なのか演出が原因なのかは不明だか、
作品の中に入り込むことが出来なかった。

しかし、
この作品の反省的検証を元にだったのか、
4年後に、ラストシーンに向け、
全ての要素が集約されていく感が見事な
傑作映画「奇跡の人」が生まれたのだとしたら
意味ある作品だったのかも知れない。

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KENZO一級建築士事務所

3.0娯楽西部劇ではない演劇西部ドラマにしようとしてポール・ニューマンを生かせず

2025年7月4日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

怖い

驚く

斬新

アメリカン・ニューシネマの傑作「俺たちに明日はない」を代表作に持つアーサー・ペン35歳の時の監督デビュー作。主演が1954年の「銀の盃」でデビューも失敗に終わり長く不遇にいたポール・ニューマン。それでもこの作品公開の1958年にはマーティン・リットの「長く熱い夜」(カンヌ国際映画祭で男優賞)とリチャード・ブルックスの「熱いトタン屋根の猫」(アカデミー賞主演男優賞初ノミネート)が前後して公開され映画スターとして認知され始めた頃に当たり、私生活でも「長く熱い夜」で共演したジョアン・ウッドワードと再婚しています。初婚のジャッキー・ウィットとは結婚生活が破綻していて、運命の人ジョアンと出会った舞台『ピクニック』から4年後の再出発、ニューマンの映画人生が本格的に始動した年でした。しかし、順風満帆とまではいかず再びブロードウェイに戻り、テネシー・ウィリアムズ原作、エリア・カザン演出の新作『乾いた太陽』の舞台に立っています。この多忙を極めた中で、この「左きゝの拳銃」出演の経緯を知ろうとしても、自伝『ポール・ニューマン語る』の中では全く触れられていません。専属契約していたワーナー・ブラザースは、ニューマンをMGMや20世紀フォックスなどに貸し出し高額な出演料を搾取していて、ニューマン本人には契約当初の週給しか支払っていなかったようです。それ以上にニューマンが望むような作品に出演出来なかった不満が大きく、その後多額の契約解除金を支払ってワーナーから独立しました。ニューマンにとってワーナーとのあくまで契約上の出演だったのでしょう。演じる主人公は、西部史に刻まれた人気の高い伝説男“ビリー・ザ・キッド”(1859年~1881年)です。ニューマンの西部劇初挑戦に相応しい題材と思うも、この時既に32歳の演劇的演技では、21歳のキッドを演じるには分別がある大人過ぎて違和感がありました。結果論ですが、この時期なら27歳のスティーブ・マックイーンの方が適役だったと思いました。

監督のアーサー・ペンは、映画初挑戦の真面目な演出でキッドの内面の葛藤に焦点を当て、通常の娯楽西部劇のアクション映画として創作していません。この異色の内省的な西部劇の見所が無い訳ではないのですが、流石のニューマンの演技が分かり辛く、上手く噛み合っていません。アーサー・ペンでは、最近「奇跡の人」(1962年)を見直して感動を新たにしましたし、「逃亡地帯」(1966年)「俺たちに明日はない」(1967年)「アリスのレストラン」(1969年)と若い頃に感銘を受けて、未見の「小さな巨人」も評価が高く、このデビュー作品だけが見劣りする結果になりました。例えば、雇い主タンストールの棺の前で復讐を誓う次のシーンで、大型オルゴールの音楽に合わせて箒を持ちながらお道化てダンスをするのですが、ニューマン演じるキッドの心情が全く伝わりません。この場面が意図するのは、後に友情を育むバット・ギャレットと、キッドの本で一儲けするモールトリーという狂言回し的人物と初めて出会う重要なシーンであり、早撃ちの名人キッドの拳銃捌きの速さを見せるところでもあります。ギャレットのジョン・デナーとモールトリーのハード・ハットフィールドが演出に合った演技をして、キッドのニューマンだけがひとり浮いた芝居に終始していました。監督と役者が良くても、脚本が良くない例に挙げられると思います。原作がゴア・ヴィダルという人で脚本がレスリー・スティーブンス。

このゴア・ヴィダル(1925年~2012年)については、『ポール・ニューマン語る』の中に登場しますが、それは殆ど政治的なつながりだけで、映画に関するのは「左きゝの拳銃」の原作者として知り合った切っ掛けだけです。アメリカ文学で最初に同性愛を正面から扱った小説『都市と柱』(1948年)が有名だそうで、『マイラ』(1968年)では性転換の女性を主人公にしたジェンダー小説として注目されました。後者は、1970年にラクエル・ウェルチ主演で映画化され、未見ですが中学生のとき映画雑誌でスチール写真をよく見た記憶があります。代表作に「ミクロの決死圏」「恐竜100万年」(共に1966年)のウェルチは全身整形の噂で話題になった覚えもあります。映画「マイラ」の出来は芳しくなく、当時はきわもの扱いだったのですが、現代ではカルト映画として記録されていて時代の流れを感じます。話をゴア・ヴィダルに戻すと、映画の脚本では「去年の夏突然に」(1959年)を原作者のテネシー・ウィリアムズと共作、「パリは燃えているか」(1966年)はフランシス・フォード・コッポラと共同脚色していて、他に「ベンハー」(1959年)「カリギュラ」(1979年)「シシリアン」(1987年)とあり、俳優として出演した映画も数多くあり、多彩な才能の持ち主であったようです。ニューマンはジョアンとのヨーロッパ・ハネムーンの時にお祝いされて、ロサンゼルスに戻ってからは、借家をしばらくシェアしていたといいます。それもゴアのパートナーはハワード・オーステンという男性でした。ニューマン夫妻の人間交友の幅広さは、小説家や演劇関係者から軍人や政治家までと、ゴアとの交友から始まり拡がっていきました。

ニューマンの映画としては、後の西部劇の名作「明日に向って撃て!」(1969年)に遠く及ばず、「ロイ・ビーン」(1972年)の詩情にも敵いません。アレクサンダー・カレッジの音楽も演出と合わず凡庸でした。脚本・演出で唯一の救いは、脇役のキャラクター表現が僅かに面白かったことで、上記のデナーとハットフィールドに加え、キッドの仲間チャーリーとトム役のジェームス・コンドンとジェームス・ベストが絡むシーンが良かっただけでした。三人が小屋に立てこもってから仲間を失い、ギャレット保安官に捕まるまでが通常の西部劇らしい味わいでした。ペン監督の真面目さが特徴の演劇西部ドラマとして観れば、また違った解釈ができるかも知れません。

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Gustav

3.0恩人を殺されたビリー・ザキッドの復讐物語

2018年12月3日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

 オープニングの音楽がユニーク。結構暗い内容なのに明るいフォーク調。左ききの若者の悲劇といった内容だ。モートンの手下じゃなければ雇うと・・・かなりオープンな雰囲気だ。

 英国訛りの平和的なタンストールは牛の値段交渉のためリンカーンに向かう途中、ライバルの悪党に殺される。早速復讐である。しかもすぐに復讐の復讐によってタンストールの知り合いの家を焼かれてしまう。なぜだか軍から恩赦が出て無罪放免となったビリーと仲間たち。しかしタンストールを殺した奴がまだ2人。やっちまった・・・

 かつての仲間でもあり、仲裁役だったパット・ギャレットの結婚式に彼らは最後の仇を撃ち殺し、パットは怒って保安官になることを決意する。そして逮捕、脱走・・・とお馴染みのビリー・ザ・キッド物語。

 復讐だけを描くような、むしろ善玉であるようなキャラかと思ったら、結局は善人も殺していく様子も描いていた。若者の暴走といった感じだが、ポール・ニューマンではその心理を上手く演技できてないようにも思える。『ヤングガン』よりは若干まし。

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kossy

3.0脚色しすぎない等身大のビリー・ザ・キッド

2013年3月9日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

興奮

総合:60点
ストーリー: 65
キャスト: 65
演出: 60
ビジュアル: 55
音楽: 60

 ビリー・ザ・キッドといえば開拓時代の歴史に残る有名な無法者。だが彼を西部の英雄として脚色しすぎて描くのではなく、等身大の若者として描いているのが評価できる。日常の彼はありきたりな若者の一人。だが自分の価値観に従って開拓時代の西部を生き、復讐のために人を殺め、そのためにお尋ね者として追われる日々。仲間を失い心休まる時もなく心身ともに疲れ果てていく姿が痛ましい。主演が若き日のポール・ニューマンということで、彼の若々しい姿とやつれていく過程がビリーと重なっていて良い。

 個人的には歴史上の人物ビリーにたいして思い入れもあるわけではない。またポール・ニューマンは好きだけれども、彼の演じた作品中のビリーにたいしても特に大きな魅力を感じたわけでもないので、たいしてこの作品にのめり込んだわけでもなく、点数としてはこの程度です。悪く言えばビリーは開拓時代に存在したありきたりの暴走した若者の一人に過ぎなくて、私にとってその名声ほどは主人公としての魅力に欠ける。

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Cape God