「タマラ・トゥマーノワ!!!」引き裂かれたカーテン 小二郎さんの映画レビュー(感想・評価)
タマラ・トゥマーノワ!!!
主演のポール・ニューマンが「出るんじゃなかった」と言い、
共演のジュリー・アンドリュースも「出るんじゃなかった」と言い、
脚本ブライアン・ムーアに至っては「僕の名前をクレジットしないでください」とヒッチコックに申し出た
『引き裂かれたカーテン』。
ヒッチコキアンの知人ですら「くそつまんね」と切り捨てた作品。
でもねえ、私は好きだあー。いやもう色々と面白いです。
ヒッチコックが自己模倣に走ってるのがちょっぴり淋しいけれど、それでも構わない。
そして私にとってこの作品の主役はタマラ・トゥマーノワなのであった。
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東ドイツの警官に追われているP.ニューマン。
バレエ公演中の劇場に逃げ込む。
舞台上のバレリーナはピルエット(回転)しながら客席を凝視している。
バレリーナは客席にいるP.ニューマンを発見!!!
(なんで!?廻ってるのに!客席暗いのに!)
そして舞台袖にひっこみ警察に通報するのであった…。
なんか、もういろいろと大変なことになっている映画である。
そして、そのバレリーナ役がタマラ。
廻っているタマラの顔が怖い。
凝視する眼が怖い。
怖すぎて、ちょっとコメディになってる。
(舞台を)見ていると思っていたら
(舞台から)見られていたという恐怖!
この映画、「視られている恐怖」を描いている。
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実はタマラ・トゥマーノワ、伝説のバレリーナなんである。
川端康成の「舞姫」にも名前が出てくる。
(川端は恐らくタマラのことは観たことなくて海外から伝わってきた話として書いている。)
11歳の天才少女と騒がれた彼女も、映画出演時は50歳手前。若い頃の写真はほんっとに美しいので、そのギャップに驚いた映画でもあった。
怖すぎのタマラであるが(そして現代の基準で言えば踊りも下手であるが)、タマラの動く姿を観れるのは貴重だと思う。
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ヒッチコックは映画に一番近いものとしてバレエをあげている。
その理由はどちらも視覚的だから。
確かにタマラは視覚的であった。
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ちなみにデマルマ監督「パッション」は本作に惜しみない愛を捧げている。