「高感度の低いトム・ハンクスは嫌いですか?」パンチライン さぽしゃさんの映画レビュー(感想・評価)
高感度の低いトム・ハンクスは嫌いですか?
「BIG」もいいけど、「スプラッシュ」もいいけど、ネット上の評価はかなり低いけど、やっぱり「パンチライン」が大好きなんです。
「フィラデルフィア」と「フォレストガンプ」でアカデミ-主演男優賞とる前の、トム・ハンクスが「あの!トム・ハンクス」になる前の、重々しくなる前の、なんか使命感を背負っちゃう前の、初々しい、フットワークの軽い、サタデー・ナイトなライヴ感が漂う、トム・ハンクスが好きなんです。あの青いつぶらな瞳が、忘れられません!
あれですよね?森繁久弥で例えるなら、駅前社長時代ですよね?何故みんな駅前から、閑静な高級住宅地に引っ越すんですか?引っ越してもいいけど、駅前な気持ちを忘れないで欲しいんです。たまには駅前にも、顔を出して欲しいんです。
親の反対を押し切ってスタンダップコメディアン(ピン芸人みたいなもん)を夢見る医大生スティーヴン(トム・ハンクス)と、お笑い好きが講じて自分もなりたい!となっちゃった中年の主婦ライラ(サリー・フィールド)の物語。この達者なお二人、これからだいぶ後に「フォレスト・ガンプ」で親子を演じることになりますね。
本作のトム・ハンクスは、結構イヤな奴なんです。医大生ですし、頭いいし、お笑いのセンスはいいし、シニカルな自信家です(感じの悪いトム・トムハンクスって、珍しいですよね?)。でも親と対立しても夢を追う、熱い面もあって。そんなスティーブンが、平凡な主婦のライラを好きになる。一見、不思議に思えますが、当然なんです。だって同じ夢を追ってるから。きゅん。
最初、ライラのネタは全くウケないんですが、スティーブンのアドバイスで観客いじりを覚えて、どんどん笑いがとれるようになる。そうこうしている内に、年齢や互いの環境の差を超えて惹かれ合う。スティーブンはライラの才能を認め、もっとお笑いの道を極めようと誘う。好きだから。一緒にずっと夢を追いたいから。そんなシニカルコミカルなスティーブンの愛情表現が、また、もう、かなり、萌えます!可愛い!
けれどライラは、既婚者です。またこの夫役ジョン(ジョン・グッドマン )がいいんです。無駄にいい声してるんです(?)だってジョンってば、誰よりライラが一番面白いと思ってるんですよ。ライラの一番の味方なんです。どんなにつまんないネタでも、笑ってくれる。私も、こんな味方が欲しい。何度か突っ返される原稿に涙ぐむ時、君が一番だよって笑ってくれる人が欲しい!
けど……、スティーブンが可愛い!ジョン優しい!スティーブンの感性が素敵!ジョンの抱擁力が素敵!の鬩ぎ合いの、128分。
スティーブンと笑いを極めるか?夫とふんわりした幸せの中で平凡に暮らすか?攻めるか、守るか!?悩み、悩む!