「人を選ぶ映画だと思う。でも、、、、」パルプ・フィクション 瀬戸口仁さんの映画レビュー(感想・評価)
人を選ぶ映画だと思う。でも、、、、
大変な犯罪映画で、ギャング、ドラッグ、殺人、セックス、八百長、死体処理など、これでもかというくらいのオンパレードなのだが、それが当たり前に起きている人たちの日常を、カラッとしたテイストで描き切っている。
この映画、ジュールス(サミュエル・L・ジャクソン)やザ・ウルフ(ハーヴェイ・カイテル)など、一部を除くと、登場人物のほとんどが、賢明とは言えない世俗的な人物で、軽率な行いで自ら悲劇を招く人ばかりなのよね。
マーセルスを裏切って麻薬を隠した若者たちは、ジュールスとベガ(ジョン・トラボルタ)に殺される。
それを垂れ込んだ情報屋の青年も、ベガの安直な銃の扱いのせいで、死ななくても良いところを、車内で頭をぶち抜かれるし、血肉がまき散らかった車の処理は、清掃屋のウルフに頼むことになる。
オーバードーズを起こしてぶっ倒れるミア(ユマ・サーマン)とか、腕時計を置き忘れたファビアン(マリア・デ・メディロス)とか。
その腕時計がいかに大事かを、彼女に伝えてなかったことが原因で、それを取りに行って惨事に巻き込まれるブッチ(ブルース・ウィリス)とか。
その惨事も、ギャングのボスともあろうものが、ファーストフードに1人で買い物に行っていたマーセルス(ヴィング・レイムス)とか。
ベガは、先に侵入したブッチのアパートで、銃を置いたままトイレに入り、用を済ませた所を、ブッチに撃ち殺される。
、、、でも、ミアは助かるし、ブッチとマーセルスは災難を脱して、2人は手打ちする。ブッチは彼女と町を出るし、ファミレス強盗を働いたパンプキン(ティム・ロス)とハニー・バニー(アマンダ・プラマー)も、命を落とすことは無く、店を出ていく。
そこが、だから、結局は「映画だから」ってことかもしれない。
道徳とはまるでかけ離れた映画だし、同性愛者のレイプシーンだとか、脳みそが飛び散るシーンとか、「ニガー」という言葉が何度も出るなど、非倫理的だったり過激な描写がてんこ盛りだし、本作を不快に思う人もたくさんいると思う。
私個人は、何度見ても惹きつけられるのだけど、見終わった後、本作と距離を置くと、「なんだこれは」と思っちゃう自分もいるんだよなあ。
アドレナリン的な興奮に満ちた映画なのは間違いないし、野心的というか野性的な感覚が充満している映画だ。「良い映画」とは思わないし、見る人を選ぶ映画でもある。それでも、「面白い映画」だと思う。