「結局は笑顔なのさ、ということでしょう」パリ空港の人々 あんゆ~るさんの映画レビュー(感想・評価)
結局は笑顔なのさ、ということでしょう
1993年製作のフランス映画でございます。フランスの空の玄関口、シャルル・ド・ゴール空港で撮影されたちょっと奇妙な作品。わたくし個人はこの空港を一回利用したことがあります。とにかく大きな空港で、わたくしが経由でいた数時間は、なにやら不信な箱が見つかったとのことで、マシンガンを持った軍隊の人がたくさんいました。そういった意味で、わたくしには記憶に残る空港です。
内容は、カナダからフランスに入った主人公が、パスポートを盗まれ入国ができなくなってしまい、空港内部での寝泊まりを強いられてしまいます。そんな主人公は、同じく入国できない人々と出会い、共同生活するという展開になります。
フランスの国土内でありながら税関を通過しなければ、そこは国籍を持たない場所になってしまうという設定が、とても文学的。そのような異常な空間で人が生活すると、普段味わうことのない自分の存在価値を体験することになる。
社会保障もなければ公的なIDも有効じゃない空間で、人は自分というものがいかに空虚なものかを味わい、そしてそんな苦しみはどこにも届かない。こんな人々を軽いコメディタッチで描きながら、観る人の心にしっかりとほろ苦さを伝えてきます。
普通ではない特異空間に人間を置いても、それまでと同様にいれるのだろうか?わたくしたちが当たり前と思って暮らしている空間がもし崩れたら、それでもわたくしたちは変わらずいれるのだろうか?
そう考えているうちに、幸せとういものの大半が実は脆く、そして儚いものなのかな、なんて思ってしまいました。
優しい気持ちになりたい時にどうぞ。
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