パラダイス(1982)のレビュー・感想・評価
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現代のカップルは本作の力を借りなくても砂漠を突破できちゃうのでしょうか?
「青い珊瑚礁」と本作「パラダイス」は良く混同されて、どっちがフィビー・ケイツで、どっちがブルック・シールズだっけになりがちです
「青い珊瑚礁」は1980年6月米国公開のコロンビア映画、日本公開は同年8月
「パラダイス」は1982年5月公開のカナダ映画、日本公開は6月
ストーリーは基本、青い珊瑚礁の変形パターンに過ぎません
まあ、口悪く言えば二番煎じです
2人きりの楽園が、南太平洋の孤島かイラクの砂漠のオアシスであるかの違いです
ですが、ちゃんとみると大きな違いがあります
本作では二人きりでいくつかのオアシスと砂漠の逃避行はせいぜい数ヶ月、長くても1年以内と思います
一方「青い珊瑚礁」では10年程も二人きりで暮らします
幼年期から青年期の男女の成長を扱って、性徴の発現、性の目覚め、出産、家族の形成までを扱っています
それに対して、本作では中学生ぐらいのまだ恋愛も知らない男女が、砂漠で生き抜ぬこうとする内に、に恋愛関係になり、男と女になるというストーリーなのです
そこにおおきな差違があります
つまり「青い珊瑚礁」は、結婚して家族になろうということが視野にあるカップル向けで、本作「パラダイス」はこれから深い付き合いになりたいカップルの為の映画です
また本作は砂漠の盗賊が登場して、アクションシーンがあるのも大きな違いです
恋愛の障害を乗り越えて、ともにゴールを目指していくのです
チンパンジーのドクとイブが赤ちゃん猿を連れてラストに去っていくのはそれがゴールだということです
フィビー・ケイツは19歳でした
ブルック・シールズはこの時17歳
フィビー・ケイツの方が実は2歳年上でした
本作が彼女のデビュー作
祖父母がロシア系のユダヤ人
でもどことなく愛嬌のある童顔なのは母方の祖父が中国系フィリピン人だからと思います
ブルック・シールズがイタリア系貴族の一族でまさに完全無欠な超絶美女でエベレスト級の高嶺の花なら、フィビー・ケイツはどちらかというとカワイコちゃんタイプ
ここまで可愛くなくても、近くにいそうな雰囲気があります
そこが男の子にはひょっとしたら手が届くかも?と思わせるのです
女の子にも、ブルック・シールズにはとてもなれないけれどフィビー・ケイツなら頑張って盛れば近い線まで行けそう!
なんて幻想を与えてくれるのです
ちょっと知り合っていい雰囲気になりそうなのに、なかなかその先のパラダイスにたどり着けない!進まない!進んでくれない!とお悩みのそこのアナタ
彼女、彼氏と本作を二人で観ましょう
オススメです
きっと二人をパラダイスに連れていってくれると思います
本作が砂漠が舞台であるのは、そういう意味だったのでしょう
というか、現代のカップルは本作の力を借りなくても砂漠を突破できちゃうのでしょうか?
大ヒットした主題歌「パラダイス」は、フィビー・ケイツ自身の歌唱です
ちょっと物憂い曲調とキャッチーなメロディーが耳にこびり付いてしばらく消えません
それもそのはず作曲がなんと1973年の世界的大ヒットでオールディズの不朽の名作ドーンの「幸せの黄色いリボン」を書いたL.ラッセル・ブラウンでした
素晴らしい曲を書ける天才ですね
イタリアでは史上最大のヒットになったらしいです
蛇足
適当な映画のようで、設定はしっかり作られているようです
冒頭のバグダッドから地中海のシリアの首都ダマスカスまでは830キロ
隊商が1ヶ月はかかる距離でしょう
最初のオアシスの海は、地中海でもペルシャ湾でも紅海でもありません
あれは湖です
バグダッドから西のダマスカスのある方向に100キロ弱辺りに幾つか、琵琶湖並みに大きな湖が点在しています
終盤の遺跡は古代ローマ帝国の水道橋です
ダマスカスの脇を通り越して、地中海の港町でレバノンの首都ベイルートの近くの海岸にでたようです
盗賊がユニオンジャックのような旗を掲げてサラを追跡してきます
旗の中心になにか国章が入っています
1817年のバグダッドはオスマン帝国の治世下で、ロシアの南下に備えて英国がグイグイ食い込んでいたころです
英国領事はオスマン帝国の太守に次ぐ権力を与えられていたそうです
盗賊は英国領事の下請けとして、バグダッドでの諸々の仕事を請け負っていたと思われます
新撰組が葵の御紋を掲げていたように、自らの権威付けのためにあの旗を掲げていたのでしょう
ちょうどアラビアのロレンスと同じ時期でもあるのです
サラとデビッドの名前は、もちろん旧約聖書から取ったもの
サラは、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の民の始祖アブラハムの妻で王妃の意味
神がアブラハムに男子を授けると約束された女性です
デビッドは、ダビデの英語読み
少年のダビデは巨人ゴリアテに立ち向かいこれを倒すのです
これが本作のクライマックスシーンだったわけです
楽園を追放されて、約束の地にたどり着く物語でもあったわけです
二人がさまよった砂漠は旧約聖書の舞台でもあるのです
欧米の観客はみんな旧約聖書のことを思い出しながら観ていた訳です
誰が何と言おうと傑作
映画としての出来は問わない。そこにフィービーがいるから観る、何度でも。
彼女のLPだって当時買って擦り切れるまで聴いた。主題歌"Paradise"の入ったCDは最近少々苦労して手に入れ、Fenix TXが歌う"Phoebe Cates"とともにiPodのヘヴィーローテーションの地位は揺るがない。
惜しむらくは我々が観ることのできるのは短縮版ということ。死ぬまでに是非全長版が観たい!
あと途中で泡吹いて倒れるラクダが心配だ。ホントに死んだんじゃないのか!
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