「ただ賭けのためだけに走ってる訳じゃない!」バニシング・ポイント ノブさんの映画レビュー(感想・評価)
ただ賭けのためだけに走ってる訳じゃない!
1971年公開のアメリカン・ニューシネマがデジタルリマスター版4Kで蘇ったとのこと。
興味ある映画だったので早速観てきましたが、見に行った映画館では2K上映とのことで、なんでやねん!とツッコミ入れときます。
映画の方ですが陸送の仕事をするコワルスキーが白い70年型ダッジ・チャレンジャーに乗って賭けのためデンバーからサンフランシスコを目指しひたすら爆走するというストーリーで、当然パトカーからも追跡を受けるはめになるという極めてわかりやすい映画です。
疾走する最中、警察の調査によって少しずつコワルスキーの過去が明らかにされていくのがうまい手法。ちなみにコワルスキー演じるのはバリー・ニューマンという俳優でなかなか格好いい。
麻薬飲んで運転するくらいなので、もっと悪い奴なのかと思いきや、事故ったパトカー警官や運転を競った相手の安否を気にする優しい一面を持っていることもわかる。
砂漠で助け合うじいさんとの交流もいい。
エンストして困ってたゲイにも救いの手を差し伸べたりもする。
途中で挿入される恋人とのシーン、そして恋人が海で死んだこと。
ベトナム戦争に従軍し負傷しながらも功績をあげたこと。
上司の警官が女性に乱暴しようとするのを止めるなど元々優秀な警官であったこと。
一年間カーレーサーをしていたこと、などがわかってくると、いつの間にか彼の激走が自由の象徴のように思えてくるから不思議だ。
彼を助ける仲間も現れる。ヌードでバイクに乗る娘もいかしてるね〜。
盲目の黒人のDJにとってもいつしかコワルスキーが希望の象徴のような存在になってくる。
そしてコワルスキーの過去が全て明らかになったとき、彼は単に賭けのためだけに爆走しているのではないことが観客に伝わってくる。
不遇な現実に嫌気がさしたのかどうかわからないが、彼はバニシングポイント(消失点)を探し求めているのだ。
そしてそのバニシングポイントを見つけた時コワルスキーの顔には笑みが浮かび、アクセルを踏み込むのだった。