「激動の時代のうねりをカーアクションで表現したカルト作」バニシング・ポイント ぐうたらさんの映画レビュー(感想・評価)
激動の時代のうねりをカーアクションで表現したカルト作
71年公開の本作は、エドガー・ライト監督の『ベイビー・ドライバー』にも影響を与えたという。
本作で面白いのは、なぜ主人公がこれほど“走る”のか、その答えが明かされないところだろう。もちろん、ストーリー上では「翌日までにデンバーからシスコまで新車を届ける」という設定があり、主人公は時間通りに届けられるかどうかをめぐって賭けまでする。しかしだからといって、彼が命がけで、逮捕される危険すら犯しながら爆走する理由にはならない。やがて警察は大包囲網を敷き、ラジオでは盲目DJがアウトローな彼に激励メッセージを送る。
時折挟み込まれるフラッシュバック。それは彼が生きた激動の60年代の傷跡であり、目指す先には70年代。本作はまさにこうした時代のうねりを、爆走する車体とハンドルを握る主人公の体に託した「叙情詩」ではないか。ネバー・ギブアップ。自由を渇望する意志は、ラストシーンと共に永遠に生き続ける。
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