花嫁の父のレビュー・感想・評価
全3件を表示
いったい何があったのか、と思ったら
映画オープニング早々、荒れ果てたパーティ会場の後、乱れた服装でうなだれる父親。そして語り始める物語。いったい何事だったのかと、思うようなオープニングですが――そう、娘の結婚式があったのです。そりゃあ大変に決まっている。
話の内容はごく普通。大変な事故や事件があるはずも無い。精々、あったとすれば未だ新婚ですら無い婚約者通しの軽い喧嘩。すぐ仲直り。あとは結婚準備と結婚式本番のすったもんだ。ごく普通の乱痴気騒ぎ。特別なことは何も無い。当時の、アメリカの風情という違いはあるのだろうけど。
立派なお屋敷に住んでお手伝いさんまでもいる上流階級。だからこそ大変なのか、いったい何に振り回されているのかと、父親らしく振る舞えるはずも無く、嵐のように駆け抜けていった新婚夫婦。後に残された使い古しの父親がぽつり。はい、お疲れ様。
ホラー表現にも似たシーンがあるのには驚いた。自分の時だけ吹き出すコーラって良く出来てるなあ。そんな、ほのかなコメディのある映画だけど、本当にごく普通の、単なる結婚式までのすったもんだ。それでもまあ、最後には恋女房と懐かしいレコードをかけてダンスを踊るなど、麗しいエンディング、素晴らしい人生ではありませんか。お疲れ様でした。これからも、お達者で。
花嫁姿がとても美しい
教会に向かう前、エリザベス・テイラーの花嫁姿の美しいこと。時間に追われる父親が言葉を失ってしまうのも納得の姿だ。
最後、祝い客が食い散らかした自宅に残る父と母。二人がレコードに合わせてダンスを踊るエンディング。改めて関係を作っていく二人の姿がとても良い。
典型的な父親像
娘を嫁に出す父親の心境を綴った結婚式までのドタバタコメディ。典型的なアメリカの中流家庭がベースだし、相思相愛、家族愛にも恵まれて、厄介と言えば披露宴の準備くらい。おそらく観客のほとんどが自身と照らしてあるあると共感するであろう平凡なストーリー。
嫁に出す父親の複雑な胸中を描いた映画では、小津安二郎監督の「晩春(1949)」が頭に浮かぶが日本人の感性としては小津作品の方が深みが勝っているでしょう。
本作の花婿は非の打ちどころがない好青年でしたが、スペンサー・トレーシーさん遺作の「招かれざる客(1967)」では花婿が黒人という社会派ドラマの趣なので同じ花嫁の父でも悩みは雲泥の差だったでしょう。本作では、まさか、そんな役回りが訪れるとは微塵も思わず、陽気に演じていて感慨深いです。
全3件を表示