劇場公開日 2024年1月19日

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「クズ映画の最高峰」バッド・ルーテナント 刑事とドラッグとキリスト luna33さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5クズ映画の最高峰

2024年7月16日
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鑑賞方法:映画館

悲しい

先日たまたま他のレビュアーさんからこの作品が再上映されている事を教えて頂き、慌てて観に行く事となった。何という運命だろう。最初にこの作品を観たのはおそらく30年近く前の話だ。よもやまた観れる日が来るとは思ってもいなかった。

ただ人間の記憶とは実に曖昧なもので、今回改めて鑑賞したら色々思い違いが入っていた事に気づかされた。大筋としては合っているのだが状況や展開に少し記憶違いがあり、結果的に今まで思っていたのとニュアンスが違う部分と新たに気づいた部分の両方があった。とは言えやはり圧倒的に面白いのは確かだ。

そもそもの話として、常識的に考えればハーヴェイ・カイテル演じる警部補「LT」の生き様は普通の感覚の人には到底理解不能なのではないだろうか。共感する所など全く見い出せないだろうし、もう少し言葉を選ばずに言えば「本物のダメ人間」しか彼を理解しようがないとさえ思える。まさに劇中の「LT」は救いようのない完全なるクズなのだ。

人は誰でも大なり小なり色んな傷を抱えて生きてるものだし、他人に言えない過去もあるかも知れない。あるいは幸せの絶頂でふとした拍子に地獄へ落ちる事もある。人生の中で誰かを期待を裏切ったり過ちを犯したりした「傷」が心の奥底にある。その傷が時折疼く…そんな時は少しだけ彼「LT」の気持ちが分かるかも知れない。僕には彼の「醜さ」や「愚かさ」が刺さりまくるのだ。彼だって決してこんな人生を望んでいたわけじゃない。こんな人間になりたかったわけじゃない。でもあまりに心が弱すぎてこんな風にしか生きれなかったのだ。それがあまりにも悲しい。

教会で泣き叫び、神に懺悔をして悔い改める「LT」。修道女をレイプした若者二人を捕まえたが結局逃がしてやり、あり金まで全て渡す。もう何もかもが手遅れなのに。でもそうなのだ。どんなにクズでも「良い人間でありたい」という気持ちの欠片ぐらいはあるのだ。どんなにダメでもやり直そうとする。それすら無意味だと分かってるのに。そして最後は孤独に死んでいく。その「虚しさ」や「哀しさ」が僕の心を激しく揺さぶり、どうしようもない程やるせない気持ちにさせられるのだ。

映画ではMLBの賭けを扱っている事もあり、タイミング的にもMLBのスター選手の通訳が起こした横領事件が思い浮かびやすい。彼はなぜ破滅していったのか、なぜ賭けを辞められなかったのか、なぜ選手を裏切ったのか、なぜ?一体なぜ?

普通の人がいくら考えても分かりはしない。答えは「クズ」にしか分からないのだ。

【最後に】
この映画の上映を教えて下さったuzさんに心から感謝いたします。

luna33
ゆきさんのコメント
2024年7月20日

コメントありがとうございます。
luna33さんのレビューに心臓がギュッッとなりました泣
LTという人物を理解する上で、非常に参考になり助けになりました。本当〜にクズで小物なんですよねぇ〜だけど、何でしょうこの心揺さぶられる感覚は。この涙は。。ハーヴェイ・カイテルのファンなので余計に(あと私も割とクズなので笑)刺さるんですよねぇ〜(^。^)
私、横浜のジャックアンドベティで鑑賞しました。たぶんuzさんとニアミス?かもです笑

ゆき
uzさんのコメント
2024年7月18日

コメントありがとうございます。

LTに共感できる人は限られるでしょうが、誰しもああなり得るとは感じます。
むしろ誰もが、清廉潔白に生きられない自分の小さな悪事から目を逸らして生きている。
主人公は逆にそこを直視してしまったのかな、と。

哀れさというのは非常によく分かります。
自分の役割をどうしようもなく理解しながら、空中ブランコへの憧れを思い出してしまったピエロのような。
紛れもないクズでありながら軽蔑や冷笑が浮かばないのは、そのせいかもしれません。

uz
uzさんのコメント
2024年7月17日

こんばんは。

わざわざお礼まで書かれていて恐縮してしまいました。
むしろ鑑賞欲を後押ししていただいて(この時期は「暑いから」とかで断念しがち)感謝です。
無事鑑賞できたようで何よりでございました。

uz