トラベラーのレビュー・感想・評価
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もう。すでに。終わってる坊や。
イランのアッバス・キアロスタミの長編デビュー作は、1974年製作で72分の短尺。名匠と呼ばれる様になる人は、デビュー作から「モノの違い」を見せてくれるもんなんだ、と言う事を証明する様な映画です。
年端も行かないアッバスは刹那的であり、打算の塊であり、不誠実で自己中心的で、子供らしい無垢な純真など、これっぽちも持ち合わせていないと言う設定。もうね。ヤクザです。家の金は盗み、バレれば、と言うかバレるに決まってるじゃん、ソレって!なんですが、母親を嘘つき呼ばわりする。盗品を売ろうとするし、詐欺を働くことにも躊躇が無く、ただひたすら、己のためだけに金を稼ごうとし、友達にも片棒を担がせます。
テヘランで復路の交通費をダフ屋からチケットを買うために使うに至っては、すでに家に帰る気がないのか?とも思わせる。
コレって、子供が主役だから、まだ映画として成立する。かなりムナクソではあるけれど。大人にだっているだろ、こんな禄でもないヤツは。国家レベルでも、同じ事は言えるだろ?ってのはある訳で。
1974年と言えば、テヘランでアジア競技大会が開催された年。アッバスは、工事中の競技場にも足を踏み入れます。また。中東はアラブ紛争の真っただ中。イランが旧西ドイツとの契約で、原発建設を開始したのが1976年。
アッバスの姿が、どっかの誰かへの批判に思えたり、思えなかったり、なんてのはあるけれど。寝込んでしまって、試合を見逃したアッバスに、憐憫の念など全く湧かない、むしろ「ざまぁ」と思えたりする作りには、監督の明確な意図を感じるのでした。
普通ですよ。子供が主役だったらですよ。
可哀想に。この後、無事に家に帰れるんかね?姉さんの家に辿り着けるんかね?
などとなどとなどと。
心配になったりするじゃないですか?
それが全くと言って良いほどに、無い。
こりゃ、やっぱり凄いわ。
と言うか、ヤバい。世界には、まだまだ、観なきゃいけない作家・作品が、山ほどあるw
良かった。かなり。
モノクロの方も良い!
しっかりと修復されたモノクロの映像がとても良かった。
秀逸な白黒写真をそのまま連続させ動画にしているかのようだった。
やはり、この頃から既にカメラワークが素晴らしく、ずっと観てられる。
プロット的には、テヘランに着いてからテンポが少しダレてしまったのが残念。
ラスト近くで昼寝するシーンも、もっとゴールデン・スランバーな呑気な寝落ち感があれば、ラストのオチとの落差の方も際立って、よりリアルに切なくなったと思う。
ほろ苦い思い出で終わればいいが・・・
イラン南部の田舎でサッカーに明け暮れる少年が、サッカーの試合を見るためにテヘランに何とかして行こうとする。
家財、親がモスクに持って行こうとしたお布施、地域のサッカーチームのゴールやボール、フィルムの入っていないカメラで撮影して小銭稼ぎして、いざバスでテヘランへ。
サッカースタジアムで並ぶも、目の前でチケットは売り切れに。何とかしてダフ屋から購入していざスタジアムに。まだまだ試合まで数時間あるからと街ブラ→昼寝しているうちに試合は終わっていて、後の祭り。。。
田舎の悪ガキ少年のほろ苦い都会の思い出となった。夢でだましてきた人たちから逆襲は果たしてあるのか。それとも夢で見るということは悪いと思っているだけに反省があるのか。それを見ている人に委ねる。
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