劇場公開日 1988年2月27日

「差別の歴史が常識である怖ろしさ」遠い夜明け Bluetom2020さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0差別の歴史が常識である怖ろしさ

2025年4月20日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

事実に基づいた作品なので背筋が凍る。身の回りにない幸福を感じる。作品中説明されるように何百年も前に移住した人々の苦労があったにせよ、近代的な軍事力で押さえつけられたら堪らない。しかし、それが正当化され自分たちに都合の良い歴史になっていく。そうなると、簡単に修正は効かない土壌ができ上る。その怖ろしさは、瀕死のビコを診断する医師が救命措置を主張しきれない場面、捻じ曲げた死亡報告に迎合する出席者の発言、に象徴される。彼らは一人一人は善良な市民のはずで、自分たちは何一つ間違ったことはしていない感覚。沁みついた文化が見ていて悲しすぎる。おそらくその感覚は、主人公のジャーナリストにもあったのではないか? だから当初はビコと距離を置いていた感じ。
後半は、真実を伝えるべく命を懸けた亡命劇で、事実だからわかっていても、緊迫したシーンの連続で手に汗握る。悲しい題材と厳しい現実の描写に留まることなく、名匠はエンタメ的な構成で良い作品に仕上げたとと思う。

Bluetom2020