劇場公開日 1996年3月23日

「全編CGで制作された画期的アニメ映画の歴史に遺る傑作」トイ・ストーリー Gustavさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0全編CGで制作された画期的アニメ映画の歴史に遺る傑作

2020年4月18日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル、映画館

全編コンピューターグラフィックスで制作された世界初の長編アニメの画期的作品。この映像技術の優れた表現性能の革新性は、アニメーション映画のひとつの究極だろう。色んなおもちゃが、まるで人間のように描かれ感情も表情も豊かであること、物語の起承転結が考え尽くされ練りに練られて、見事にラストのクライマックスまで魅了するアメリカ映画になっている。主人公アンディの誕生日プレゼントのシークエンスでは、一番のお気に入りのカウボーイ人形ウッディがみんなの不安をなだめて勇気付けるところから、最後にユーモア溢れるオチを入れるのが巧い。新しく加わる仲間の最新のスペース・レンジャー バズ・ライトイヤーが、自分を本物のスペース・レンジャーと信じ込んでいるキャラクター設定もいい。偶然目にしたテレビCMで単なる子供向けおもちゃと知って、すっかり落ち込んでしまうところなど、笑って泣けてくる。アンディの隣の家の悪ガキがするおもちゃへの虐待もリアリティがあって残酷ではあるが、おもちゃを生き生きと描く対比で人間の感情は故意に抑えて描くコンセプトの為、映画の世界観に収まっている。ここには、子供でも考えさせられる内容が込められていて、単なる娯楽アニメに終わっていない。
登場するおもちゃの特質や制約を見据えたキャラクター作りの細かさや、その個性を生かした言動の表現の多彩さと、物語で活躍する役割分担のユニークさもある。そして、おもちゃ世界の正義と平和のメッセージもきちんと込められている。

細部に至る描写の丁寧さでは、画面の隅の窓ガラスを流れる滴まで描いた夜の雨降りシーンにその一端が表されている。制作者の真摯な姿勢がディズニーの精神とぴったり一致しているのが、何より嬉しく、また感心もした。この作品は、子供たちだけではなく、夢や希望を失いかけた大人たちにとっても観る価値のある映画に仕上がっていると思う。90年代を代表する快作的な傑作になるだろう。

Gustav