「ヒロインの絶対的美貌が前提だが…」田園交響楽(1950) KENZO一級建築士事務所さんの映画レビュー(感想・評価)
ヒロインの絶対的美貌が前提だが…
アンドレ・ジッド原作で、
第1回カンヌ国際映画祭でのグランプリ作品
と知り初鑑賞。
神の御意志と理解した牧師が
盲目の少女を娘同然に育て上げるが、
二人の間に親子以上の男女間の意識が
生じてしまい悲劇に陥る。
演出としては、長い時間の経過を
成長の記録紙の積み重ねで描く上手さや、
盲目のヒロインを巡って続く
嫉妬の連鎖の描写が見事だ。
妻は牧師の夫を奪うヒロインに、
ヒロインは異性として応えられない牧師に、
牧師は長男の若さに、
長男は育ての牧師を慕うヒロインに嫉妬、
と展開していく。
全ては彼女の美貌が前提だ。
しかし、
「映画界で最も美しい瞳」と言われた
盲目のヒロイン役のミシェル・モルガンは
フランスでは美人との誉れ高い女優
なのだろうが、
彼女がどうしても皆を夢中にさせるような
美人に感じないことが、
私の作品への没入を封印してしまった。
この作品は、
宗教色を強く感じさせる内容だが、
特に、牧師自身、「彼女を開眼させた如く、
我らにも心の目を与えたまえ」との説教を
行う場面があったにも係わらず、
残念ながら、これを克服出来ない
エンディングを見せつけられる。
人間の幸福感とは難しい。
物理的な改善があったとしても、
それが必ずしも幸福に繋がる絶対的な
要素では無いことを教えてくれるが、
悲劇的なラストシーン後の家族を想像すると
暗たんたる気持ちにもさせられた。
私の乏しい読書歴の話で恐縮ですが、
「狭き門」やこの映画の原作を書いた40・50代
の作品よりも
成長譚の印象がある晩年に発表した三部作
「女の学校・ロベール・未完の告白」
の方が、アンドレ・ジッド小説としては
好みではある。
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