「ポランスキーが本格的に挑んだトーマス・ハーディー文学の古典的な美しさ」テス Gustavさんの映画レビュー(感想・評価)
ポランスキーが本格的に挑んだトーマス・ハーディー文学の古典的な美しさ
ナスターシャ・キンスキー主演のクラシック映画復活のドラマ。ポランスキーにしては微妙に奇麗事過ぎる映画作法だが、それだけに正統派も熟せる映画人の自負心を感じる。それがキンスキーの個性的な美しさと相まって、滋味豊かな愛のロマンが展開される。見所はキンスキーと並んで、ジェフリー・アンスワースとギスラン・クロケの撮影が、兎に角美しい。フィリップ・サルドの音楽も的確だ。
ただし、ポランスキーが本格的にトーマス・ハーディー文学に取り組んだ演出力は見事なのだが、これまでのポランスキーらしいアクの強さが感じられないのが惜しい。そのポランスキーは、アメリカを追われたことに対する謝罪のつもりで、このイギリス文学の純粋な男女の愛を描きたかったのだろう。舞台背景の良さ、古典ドラマの美点、役者の演技レベルの高さ、これらに対するポランスキーの演出に個性不足を感じてしまった。
1980年 12月16日 みゆき座
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