「イヴリンの総て」チャイナタウン 梨剥く侍さんの映画レビュー(感想・評価)
イヴリンの総て
ハードボイルド御三家と呼ばれる、ハメット、チャンドラー、マクドナルドの作品はそれぞれ映画化されてはいるものの、意外にもロバート・タウンのオリジナル脚本による本作が最もハードボイルド映画として完成度が高いと思う。
上記3人の代表作も含めてすべてアメリカ西海岸が舞台で、カリフォルニアの風土が何かしら醸成するものがあるのかもしれない。カリフォルニア水戦争を背景に水利権を巡る陰謀に端を発するが、終盤過去の闇からおぞましい真相が浮かび上がってくる。このあたりの悠揚たる語り口は実に巧みというしかない。監督自ら演じるチンピラが主人公の顔を傷つけて、中盤以降鼻に絆創膏を貼って男前を台なしにしているのも面白い。
タイトルの“チャイナタウン”は最後の最後まで登場しないが、あまりに衝撃的なラストシーンである。情感たっぷりの劇伴とともに忘れがたい余韻を残す。
ロマン・ポランスキーの作品では、「水の中のナイフ」とともに思い入れのある映画だ。DVDも持っているが、せっかく再上映してくれるのだからとスクリーンで鑑賞することに。
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