誓いの休暇のレビュー・感想・評価
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映画史に残る大傑作!
シネマヴェーラ渋谷にて鑑賞。
ウクライナ生まれの映画監督グリゴーリ・チュフライによる反戦映画・青春映画・家族映画の傑作!
冒頭、広大な場所に立つ母親の姿が映されて、母親が「ここに来るにも、戦場へ行くにも、この一本道を通る…」という思いで遥か彼方の墓に眠る息子のことを考えている。
そこに「この母親の息子が知らない姿を…」という語りが入って、戦場で闘う息子が描かれる。
息子アレクセイは19歳、戦場で戦車に追われて逃げるのだが、この戦車と少年の追跡シーンが物凄い迫力あり、逃げる少年と追う戦車の流れるようなシークエンスは天地逆転するまで描く見事なカメラ!
こんな素晴らしい追跡シーンは観たことない。
そしてアレクセイは4台の戦車のうち2台を爆破した手柄から、「行きに一昼夜、母親と過ごす一昼夜、帰りに一昼夜」の6日間の休暇を上官から貰う。
アレクセイは「必ず期限には戻ります」と上官と約束する。「誓いの休暇」である。
アレクセイは「休暇をもらった」と母親の住む実家を目指すのだが、見知らぬ仲間兵士から「愛する妻に石鹸を渡してほしい」と頼まれて寄り道したり、軍用列車に隠れて乗っていると若い女性シューラが乗りこんで来てお互いに恋の芽生えを感じたり、と母親の元に帰るのが遅くなり……という一連の物語が素晴らしい。
観ているこちらは、「アレクセイ、早く実家に帰らないと…」と思ってしまうのだが、アレクセイとシューラはわりとノンビリしている感じ。これが切迫感を観客に感じさせる上手さに繋がっていると思う。演出の妙。
しかし、賄賂を貰って軍用列車に忍びこませる兵士、夫が戦場にいるのに浮気する妻など様々なエピソードも盛り込んで、何度観ても新たな発見があるような「深い映画」になっていると思う。
映画史に残る大傑作!
影画的反戦映画
戦争で手柄を上げ、数日間の休暇をもらった若い兵士が故郷の母親に会いに行く話。
いったん戦場を抜け出した兵士の行方なんか誰にもわからないというのに「数日以内に帰ってこい」という上官命令を死守しようとするアリョーシャ少年はちょっと律儀すぎるんじゃないかという気もするが、それが誇り高きロシア兵としての矜持なのだろう。
とはいえまだまだ体も心も少年のアリョーシャは、戦争の外側にあるさまざまなできごとに心を動かされる。貨物列車で出会った同世代の女の子とのやりとりは何とも等身大で微笑ましい。脚を失った男の荷物を持ってやるシーンも印象的だったな。
誰に対しても優しく振る舞いすぎるアリョーシャは、そのせいで何度も列車に乗り遅れてしまう。挙句の果てには線路が爆破され、通りかかったトラックの運転手に故郷の村まで送り届けてもらうことに。
村へ着いた頃にはもう折り返さなければいけない時刻。アリョーシャは母親と刹那の再会を果たすと、すぐさまトラックの荷台に乗って去っていく。母親の痛切な表情と、村から伸びる美しい一本道のビジョンが強く心に残る。
登場人物にしばしの日常を経由させることで影画のように戦争の悲惨を描き出した反戦映画の傑作だった。
ソビエト共産党下の制作でも普遍的な価値を持つ反戦映画の名作
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