「小気味よいアクションとお色気で魅せる、B級映画の傑作!」探偵マイク・ハマー 俺が掟だ! ミラーズさんの映画レビュー(感想・評価)
小気味よいアクションとお色気で魅せる、B級映画の傑作!
妻の浮気調査依頼されたのに、調査対象と関係してしまうモラルレスな主人公が、殺された戦友の背後にある秘密組織と対決する。
ミッキー・スピーレンの原作は、発刊当時人気もあり自分も一時ハマって読破したので、割と思入れのある作品だか、他の映像化作品は本作とロバート・アルドリッチの怪作「キッスで殺せ」以外は目ぼしい作品がない印象。
「キッスで殺せ」も原作に忠実な前半部分の攻めた暴力描写に期待したが、中盤は少しダレる印象で何故かシュウシュウと熱と光りを放つ放射性物質の争奪戦になる展開には驚いたが。
音楽を担当したビル・コンティの美しくもノリの良い旋律とモノクロ写真を動画風にカットバックしたタイトルデザインとオープニングも目新しくて引き込まれる。
アクションやバイオレンスも程よくタイトに敷き詰められており、ガソリンの代わりにウイスキーで動かした車で逃走や防弾リムジンの爆走場面などのシチュエーションを凝らしたアクションに、サイコな変質者による殺人場面の凝った撮影などもちょっとした工夫があり良質な見せ場になっている。
お色気(死語)も本作の見せ場の一つで、主演のバーバラ・カレラのラブシーンでのヌードを披露する見せ場や当時のポルノ女優さんの出演している乱行もどきのED治療場面なども公開版では、ボカシなどが入りドキリとしたが、海外版ソフトなどで見る限りとても大人しく当時の映倫の行ないは過剰だと思う。
タフガイ探偵と有能な秘書の絆もクールで、マイク・ハマー役のアーマンド・アサンテは、昼メロのプレイボーイみたいな風貌のタフガイを好演。猪突猛進なところがいい。
なんといっても白眉なのは、秘書のヴェルダ役のローレン・ランドンが、最高である。
原作とは違う金髪だけど、ハマーを慕いサポートしながら、拳銃をガンガン撃ち、サイコ野郎にウリウリされながらも気丈に振る舞う有能な女性がハマり役。
そういえば、ローレン・ランドンが主演した作品は、この映画と巨匠ロバート・アルドリッチ監督の名作『カリフォルニア・ドールズ』が有名だが、今の視点で再見すると早すぎたフェミニズムを謳うアクション映画『ハンドラ』の主役である剣闘士もカッコよくて魅力的だった。
悪女役のバーバラ・カレラも70年代後半から80年代前半にかけてどちらかというとジャンル映画でエキゾチックな美しくを発散して、人気のあった人だったと記憶している。個人的には、『エンブリオ』とか『ドクター・モローの島』などの怪奇SFでの悲劇的な最後がトラウマ。
そういえば、漫画家の新谷かおるも好きな女優の一人として挙げていた。「エリア88」の後期に仲間になる元傭兵パイロットのセラ(セイレーン・バルナック)のモデルは多分彼女だと思う。
脚本のラリー・コーエンも『悪魔の赤ちゃん』や『マニアック・コップ』などのホラーやミステリーサスペンションなどのB級ジャンル映画で良作が多いが個人的には、この本作と未公開の傑作『殺しのベストセラー』(ジョン・フリン監督作!)とチョイと落ちるが、監督脚本も兼ねた探偵アクションの「殺しのイリュージョン』などが面白い。シドニー・ルメット監督作の『ギルティ』とかも。
撮影のアンドリュー・ラザローもちょっとしたカットに凝ったところが有り、この後に『ランボー』や『ストリート・オブ・ファイヤー』などの良作を担当している。
監督のリチャード・T・ヘフロンは、テレビドラマも多く手掛ける職人だが、アクション物で手腕を発揮する印象で、ジェームズ・ミッチャム主演で、妹を探しに都会に来たカーボーイが、売春組織を相手に妹の復讐するアクション映画『トラック・ダウン』でキレのいい演出と工夫を凝らしたアクションで一部映画ファンに注意されていたけど、今回もアクションとエロの見せ場をテンポ良く繋ぎ、上出来なB級アクションとして魅せてくれる。
そういえば、『トラック・ダウン』は、今や日本映画の名匠黒沢清も影響を受けた作品として語っていた。
原作を現代的に改変して見せ場と小気味よいテンポの活劇やお色気の連打で魅せつつ原作に準じた結末のラストも見事で、B級アクション。こうあれと思うベストムービーで傑作の一本です。
[ちなみに自分的なB級作品の定義は、階級や侮蔑ではなく、低予算や量産ジャンルの中でも、真摯に観客へのサービスに優れた作品を示す意味で使ってます。]