「性差が親子関係に影響しているように思えた」黄昏(1981) 根岸 圭一さんの映画レビュー(感想・評価)
性差が親子関係に影響しているように思えた
ヘンリー・フォンダ演じるノーマンは、女心を理解して自分から歩み寄っていくような努力をしない人生を送ってきたのだと思う。それが娘との関係が悪く、孫との関係が良い理由な気がする。同性だと根本的な気質や志向が似ていることが多いので、相手の考えが理解しやすく気が合いやすい。男の子は何も教えなくても戦いとか乗り物が好きで、女の子はおままごとが好きみたいな、性差の話をしばしば聞くことがある。やはり男女間の性質の違いは大きなものがあると思う。それがここにも出ていて、だから孫とは釣りを通じて仲良くなれた。
それでも妻との関係が良いのは、妻がぶっきらぼうなノーマンの本当の良さを理解し、妻の方から歩み寄る努力をした結果に思える。だが、親子の場合そうはいかない。なぜなら子供が親の元で暮らしている以上親の方が常に優位な立場だし、子供に親という大人を理解することを求めるのも無理がある。ノーマンは自分から子供に歩み寄っていくようなことはしなさそう。そういう昔からの積み重ねが、父ノーマンと娘の間に溝が生まれた理由だろう。だが、大人になり自立し、対等な関係で程よい距離感を持って接するようになったのが、関係改善の一助になったように見える。
家族愛を描いた良い映画だったと思うけれど、親子の関係改善の描き方はあまり上手く無いと思った。まず、ノーマンと娘の間に過去何があったのか明確なエピソードが無い。二人の関係改善も、孫の存在という理由があったにせよ、急速過ぎてリアリティに欠けているように感じた。この辺をもっと丁寧に描いていれば☆4にしたな。
あと当たり前だけど『怒りの葡萄』とか若い頃のイメージしかないヘンリー・フォンダが高齢者になっていて驚いた。