「自分の中で解消できない人生の不満が、社会に対する攻撃として表れている」タクシードライバー 根岸 圭一さんの映画レビュー(感想・評価)
自分の中で解消できない人生の不満が、社会に対する攻撃として表れている
トラビスはベトナム戦争の帰還兵で、心を許せる家族も友人も誰一人いない孤独な男。学歴や知識、技術も無いので良い仕事には就けず、生きるために仕方なく働く毎日。さらに仕事柄、ニューヨークの人々の堕落ぶりが目につきやすいので、余計に負の感情が溜まる。性格も独り善がりなので、女性に対して相手を考えないアプローチをして嫌われる。そのような自分の中で解消できない人生の不満が、社会に対する攻撃として表れている。孤独で闇を抱えた男の描写が面白い映画。
アイリスを助けようと殺人にまで手を染めるところも、独り善がりの極みだと思う。ただ、ラストシーンで通常通り働いている姿を見ると、映画後半からの彼女を助けようとする行動は全て妄想なのかと思った。それでは最後のタクシーでのベッツィーの「新聞を見た」という発言は何だったのか。この辺の解釈は観客の判断に委ねられているのかもしれない。『キング・オブ・コメディ』のマーティン・スコセッシ監督の作品なので、それも有り得ると思った。
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KENZO一級建築士事務所さんのコメント
2024年3月30日
根岸圭一さんへ
いつも私ごときのレビューに共感とコメントを頂き大変恐縮いたしております。
私もこの“映画.com”に3~4年前から参加させて頂いておりますが、たくさんの方々の高等な見識に目を開かされるばかりで、いつも各作品に新たな理解を加える要点を教えて頂いております。
根岸さんのレビューも楽しみにいたしておりますので今後とも宜しくお願いいたします。