「3回目にしてやっと共感」タクシードライバー Chisaさんの映画レビュー(感想・評価)
3回目にしてやっと共感
何気に3回目のタクシードライバー!の割に、ほとんど内容を覚えていなかったこの感じな。今回ついに脳裏に刻まれました。不朽の名作ですもんね。これで最後になるのかならないのか。
舞台は、大統領選挙を間近に控えたニューヨーク。あちこちに候補者のポスターが貼られ、明るい未来を約束する演説が響き渡る。街を行き交う人々は希望に溢れ、あくせくと働いている。
一方、タクシードライバーのトラヴィス(ロバート・デ・ニーロ)は仕事も恋愛もうまくいかず、鬱屈した日々を送っていた。想いを寄せた女性をポルノ映画に連れて行った挙句にこっぴどくフラれ、行き場のない心境を仕事仲間に吐露しても、人生に希望なんか持つな、とにべもない。この日々をどうにかしたい、でもどうにもならない。行動を起こしたい、でも全てが空回る。さらに、まだ12歳だという幼い娼婦アイリス(ジョディ・フォスター)との出会いによって、その思いは加速していく。
容赦なく蓄積するストレスと自己嫌悪がトラヴィスの視野を狭め、徐々に狂気を帯びていく。いつしか、誰とも会わず、一人でテレビ画面を漫然と眺め、手を挙げた客も無視するようになった。そしてある日、彼はついに行動を起こす。
最後まで観て「やっぱ全然覚えてなかったわー」ってなったんだけど、意外と救いのあるエンディングだった。世界は救えなかったけど、救えた人もいたし、何よりトラヴィス自身に起こった変化が画期的。何に対しても自信が持てずに自堕落だった彼が、つまらない日常を生き続けていく心の拠り所みたいな経験をして自信をつけた。っていうか、自信ってなんだろうね? 自信を持って生きている人の方が世の中少ないんじゃない? 根拠のない自信を堂々と持てる人もいれば、根拠があってもなお疑心暗鬼になる人もいる。私はたぶんずっと前者だったけど、最近自分を構成するいろんな基盤からボロが出てきた気がして足が竦んでる。そういう時期だからこそ今回初めてトラヴィスに共感できたのかもしれない。なんて。
でもトラヴィスみたいな人はさ、栄光が徐々に過去のものになっていくことに耐えられずにいつかまた自暴自棄な行動に出そう。アベンジャーズとか観ても思うけど、ヒーロー役って中毒性あると思うんだよね。一度ヒーローになったら常にそうありたいと願う。「元ヒーロー」は最大の禁句、的な? いや、私は昔からヒーローになりたかったからそういうことをよく考えていたんだよね。笑
さて。ヒーロー談義はこの辺にして。
今回は「ディパーテッド」「ウルフ・オブ・ウォールストリート」に続いてのスコセッシ監督。さすが代表作。上手。40年も前の映画なのにとても洗練されている。募っていくトラヴィスの狂気とは相容れない気だるげなジャズや、スローモーションの演出など、ジメッとしたノスタルジー感が好き♡
ディカプリオがついにアカデミー賞獲ったことだし、次は「アビエイター」かなぁ〜♪