「荒んだ都会の雰囲気がたまらなくかっこいい」タクシードライバー いもりりさんの映画レビュー(感想・評価)
荒んだ都会の雰囲気がたまらなくかっこいい
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ベトナム帰還兵の主人公は自分の境遇や犯罪だらけの町に苛立ちを覚え、
眠れない日々を夜な夜なタクシーで流して紛らわせる。
社会に対する漠然とした不満はあるが、無知な彼に政治はわからない。
彼の世界観は狭く、スラム街の住人がそうするようにベッツィをポルノ映画に誘い、
偶然客が口走っただけの44マグナムにこだわり、聞きかじった知識だけで銃談義をしてご満悦。
愛銃を手に鏡の前でポーズを決めるそぶりは、TVヒーローの真似をする子どもと変わらない。
漠然とした苛立ちは、彼が感じるところの腐った社会に向けられ、
ついには、家出少女を売春婦としてこき使う悪党一味を皆殺しにする。
彼の行為は犯罪で、しかも浅はかであり、決して褒められない。
しかし結果的に彼の行動は悪人を消滅させ、少女を救い、彼自身も苛立ちから解き放たれる。
…つまり狂った人間の許しがたい行動が、ベストな結末を導いた?
犯罪も場合によっては許されるとかそういうことではなく、
もっと大きな意味で既存の価値観の再考を迫り、行為の意味を探求する作風が衝撃的。
雰囲気、音楽、ストーリー、演技、ラストシーンまで、稀にみる傑作。
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