「実話であるが故のリアルな描写」大脱走 Moiさんの映画レビュー(感想・評価)
実話であるが故のリアルな描写
感想
原作者のポール・ブリックヒルは北アフリカ戦線に展開していたオーストラリア空軍に志願、1940年、第二次世界大戦に参戦。スピットファイアのパイロットであった。ドイツの主にメッサーシュミットと戦ったと言われる。1943年撃墜され捕虜になったのち、ドイツ国内北東部ポーランド国境近くにあった第三航空兵基幹収容所に収容された。この収容所はドイツ空軍司令部から直々に派遣された精鋭部隊が管理する、主に英国空軍の捕虜将校達を隔離する為、厳重な警備体制を敷いて作られた収容所であった。実際は他にアメリカ、カナダ、オーストラリア、ポーランドなどの空軍捕虜将兵全般が収容されており、収容所建設に携わったソ連のロシア人捕虜もいたという。ブリックヒルはその時実際に行われた脱走計画行動を元に小説を書いた。
収容所からの脱走のプロセスは三本のトンネルを三方行に計画的、組織的且つ極めてユニークな方法で掘り進み脱出するというもので最終的に内一本のトンネルから現実に脱走が実行された。
監督は登場人物について本作を極上のエンターテイメントに仕上げる為にドイツ各地の収容所にいた脱走を繰り返している、言わば脱走の常連捕虜が集中管理体制の元、一箇所に集められたという設定にしている。
中でもゲシュタポと親衛隊にマークされ第三航空兵基幹収容所に収容されたロジャー・バートレットはドイツ国内にある捕虜収容所から大量脱走者を出して政情不安を煽り、大戦末期のドイツ国力を内から弱める計画を自ら画策、計画及び実行のリーダーとなる頭脳明晰な人物で仲間からはビッグXと呼ばれ不屈の闘志を持つ男であった。
ビッグXの元に各収容所の名脱走犯でトンネル王と呼ばれる者、交渉上手な調達屋、航空写真技師で手先が器用な書類偽造屋、測量屋、警備屋、陽動屋、など様々な個性的でユニークな脱走の達人が集合し最大250名を脱走させる計画が立案策定され実行に移されていく。果たして捕虜達の運命や如何に?
脱走までの過程、脱走後の各者の動きなど、手に汗握るスリリングでアクティブな話が展開していく。実話だけに驚きのエピソードが目白押しに展開していく。映画終盤犠牲になる者を観るとやはり戦争の悲惨さを感じるが、戦争の意義として基本的に自由主義世界とファシズムの戦いと標榜しているだけに犠性者が出たとしても撹乱作戦としては成功したという意見が大半を占め、意義はあったとして懲りない連中は再び捕まり収容所に戻っても再脱走を試みる行動は継続し続けるという描写もあり、監督の好むところの漢臭い、不撓不屈の精神を感じる作風で感動のエンディングとなっている。
製作総指揮
ウォルター・ミリッシュ 「ウエストサイド物語」
製作・監督
ジョン・スタージェス
「OK牧場の決闘」 「荒野の七人」
脚本
ジェームス・クラベル 「将軍」
ウィリアム・R・バーネット
主演
スティーブ・マックイーン
:バージル・ヒルツ アメリカ空軍大尉 独房王
単独脱走最多 収容所独房送りNo.1 相棒の
アーチボルド・アイブス(モグラ)射殺後単独行
動を慎みロジャーのトンネル計画に協力。単独
脱走と見せかけて収容所外周部の情報を収集し
ロジャー達に報告する。脱走後、バイクでのス
イス国境越えシーンは本作クライマックスの超
圧巻シーンで観応えあり。
ジェームス・ガーナー
:アンソニー・ヘンドリー 調達屋
人誑しの交渉上手。依頼物は可能範囲内で調達。
収容所の(白イタチ)ウェルナーと交友関係。
リチャード・アッテンボロー
:ロジャー・バートレット少佐 ビッグX
大脱走計画のリーダー。ドイツ国内の撹乱を
狙う。
チャールズ・ブロンソン
:ダニエル・ヴェリンスキー トンネル王
閉所恐怖症に耐えながらトンネル掘る事17本!
ジェームズ・コバーン
:セジウィック オーストラリア空軍 機械製造屋
トンネル内、鞴形式エアポンプを考案。
ゴードン・ジャクソン
:マクドナルド 地理学の専門家 情報屋
脱走時のドイツ国内での所作心得を提案教授する
ディビット・マッカラム
:エリック・アシュレー=ピット英海軍少佐
土分散屋 下着を改良してトンネルから出た土を
歩行中に処理できる服を考案。
ドナルド・プレゼンス
:コリン・ブライス 航空写真技師 偽造屋
ナイジェル・ストック
:ガベンディシュ 測量屋
ジェームス・ドナルド
:ラムゼイ 英国空軍将校 収容所 捕虜代表
音楽:エルマー・バーンスタイン
テーマ曲を聴くだけで本作のマックイーンやコバーンの顔が浮かぶ。勇気が出てくる名曲で素晴らしい。
⭐️4.5
共感をありがとうございます。
息子にこの映画を薦めたところ、「とーちゃんもかーちゃんも絶賛だから観たけど、あんなにたくさん人が死ぬ映画は嫌だ」と言われてしまいました。たしかにそうなんですよね。
他作への共感どうもです。
マックィーンはライダーですから自分でやりたかったと思いますよ。
カット割りからジャンプ直前までは本人ですよね。
いつも詳細なレビューに感心しております。
これからもよろしくお願いいたします。
スティーブ・マックィーンが「大脱走」のオートバイジャンブを自分でやりたかったが止められ、スタントマンがやった事を後々まで後悔していたと言う話を聞きました。トム・クルーズみたいに自分でやっていればマックイーンも満足できたんでしょうね。