第三の男のレビュー・感想・評価
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構成が良かったが、音楽のミスマッチ及びキャラクターが平面的だったのが残念。
小道具や場面展開には見るべきものが多く、大変勉強になった。1949年当時では画期的だったのではないかと思った。また、混沌とした時代に翻弄された人々の哀愁も漂う。
(別の映画の話題だが、東京物語や浮雲などの戦後映画にも、戦争の傷跡を色濃く感じる。)
最近見た映画の中では、「道」の次に感情移入出来なかったので、その理由を考えてみた。
①葬式で始まる映画にしては音楽が明るすぎる。コミカルな印象を受けてしまう。棺桶から志村けんが出てくるんじゃないか?と思うくらい明るい。
②キャラクター造形について。
●主人公のホリー
友達の彼女に求愛するのがやばい。この時点で私の感情移入対象はハリーへ・・・(個人的な体験で、友達に彼女を取られそうになったことがあるので)。
●ハリー
ただ悪いだけで、まるで良い面が描かれないところが非常に残念。少しでもアンナを心配する描写があれば人間味が出たのに重ね重ね残念。例えば、「ワクチンの横流しで得たお金でアンナの難病を治す」とかいう設定にする方が良いと思った。だから、ハリーがすごく平面的で薄っぺらい。
●アンナ
仕事でどれだけ成功しているか分からないが、強制送還されそうになってる人間にしては良い生活をしすぎな感じがして、感情移入出来ない。ただし、アンナだけが芯を貫いて、ハリーを思い続ける所がこの物語における一筋の光明とも言える。むしろ、アンナの一気通貫した人間性を際立たせるために、ホリーやハリーが脇役のように配置されているのではないかと思うくらいアンナだけが際立って芯を貫いている。
一気通貫した人間性は主人公に持ってくるべきだと痛感した。例えば、ハリーとアンナを結婚させて逃がすために犠牲になるようなホリーであれば感情移入できる。
エビス🍺
親友に呼ばれてウィーンにやってきたハリーが会う前に交通事故で死亡。事件の真相を暴こうと、その現場を目撃していた「第三の男」を探す話。
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名作サスペンスということで、私は結構怖い感じだと思っていたんですが、今ではエビスビールで知られてる音楽が流れるなか割と緩い雰囲気で話が進む。
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やっぱり古典の映画って当時革命的でそこから今の流れに繋がっていくっていう出発点なので、色んなエンタメが溢れる現代の私たちが見ても正直そこまでなところもある。特に、「第三の男」のツメの甘さが気になって気になって。
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自分の正体バレてないって自信満々にハリーに話してるけど、もうその前にハリーは警察と行動共にしちゃってるから色々バレてるし。囮に引っかからなさそうに見えてちゃんと引っかかってたり。凶悪なシリアルキラーを見てきてる今の人間としてはなんとも間抜けに見えた。
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あとはやっぱりテーマ曲がもうエビスのイメージでしかなくなっちゃってるから、あの曲が流れる度に鼻歌歌ってビール持ってる幻影が頭の中に出てきて全く緊張感が保てない(笑).
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でも戦後のウィーンはアメリカソ連イギリスとか色んな国の人がいたから、意味のわからない言語をずーっと話してる人の不気味さ、言葉がわからないことへの恐怖がよく出てたと思うし、やっぱり「第三の男」が正体を表すところのうつし方は今見てもすごい。
格調高き光と影
Amazon Prime Videoで鑑賞(吹替)。
モノクロならではの味わいが素晴らしかったです。
ビールのCM音楽だと思っていたテーマ曲。明暗のコントラストが織り成す芸術性。スリリングな展開とサスペンス。…
それらが渾然一体となっている極上の映画でした。
映像表現としての「光と影」。登場人物たちの関係性としての「光と影」。ハリー・ライムというひとりの男が抱える「光と影」。いくつもの「光と影」が物語を彩っていました。
ストーリーに既視感を覚えたものの、「本作がパイオニアなのかも」と考えたら、全て納得出来ました。トリックにしろ、下水道での捕り物にしろ、もしかしたら本作が元祖かも、と思いました。当時、それらの要素がすでにありふれたものだったとしたら、本作は名作と言われていないのではないかと云う気がしたからです。間違っていたらごめんなさい(笑)。
※修正(2024/03/13)
一途な愛は名画をも超えて
既に観たと思い続けていたが・・・しかし、初めて観たような気がしてきた。
オーソン・ウェルズは影の中で恐ろしいほどセクシーだ。
この映画は彼の存在がすべてかのようだ。光と影。白と黒。先の大戦後のウィーンと言う街はヨーロッパの気質のすべてを物語っていたのだろう。
空前絶後の正義感に充ち溢れたアメリカ人作家の途方の暮れ方は観るものをハラハラさせ気の弱い女子供は映画館を出てしまうかもしれない。難民に近い劇女優は自分を捨てた第三の男を待ち焦がれてすべてを拒否する。そして第三の男の夢見たものは何か?
それを解き明かすカギとなるのはこの街の地下下水道と長く真っすぐに伸びる道。
ハードボイルド映画の新しい手法はヌーベルバーグにかき消されてしまったかのようだ。
でも、そんなことはどうでもいいのだ。モノクロの説得力に魅了され、映画音楽の効果を見せつけられた。否応なしにだ。
脚本、演出、演技、撮影、音楽、すべてが揃っていて、好きになれない
戦後の荒廃したウィーンを舞台に、友人の殺害事件の謎を解明するアメリカ人の三文小説家を主人公にした完璧なサスペンス映画。グレアム・グリーンの巧妙な起承転結で惹きつけるオリジナル脚本とロバート・クラスカーの考え尽くされた構図に光と影のコントラストが見事な撮影、そして律動的に心地良い緊張感を生むメロディーを民族楽器ツッターで奏でるアントン・カラスの音楽、これらが完全一体化したリードの演出には感嘆しかありません。
ただ、ラストシーンが象徴する悪の道に染まる友人を愛した女の堅固な情動が独占しすぎて、主人公の活躍が徒労に終わる物語の虚しさに、どうしても物足りなさを感じてしまう。名優オーソン・ウェルズとアリダ・ヴァリふたりの存在感と比較して、主演のジョセフ・コットンの演技力含めた魅力が弱く、役柄も善人過ぎて深みがない。設定の売れない作家はあっているのだが。映画史上の名ラストシーンでも、好きではない。
キャロル・リード作品では、「邪魔者を殺せ」「落ちた偶像」が気に入っているし、名匠66歳の遺作「フォロ・ミー」が一番好き。
作品を際立たせるセリフ
「第三の男」は古典的名作だし、アントン・カラスのテーマ曲も「超」が付くほど有名で、誰でも一度は耳にしたことがあるように思う。
先般鑑賞した「名もなき生涯」が第二次世界大戦中のオーストリア人夫婦のストーリーだったことから、大戦後のウィーンを舞台にした「第三の男」を思い出してレビューを書いています。
この映画は、オーストリアが二度の大戦の敗戦を経て米英仏ソの分割統治となり、オーストリア=ハプスブルク帝国の栄華からの凋落が著しいなかの、荒廃したウィーンを舞台としている。
ストーリーは、サスペンスタッチで御存じのことかと思うが、僕がこの作品で最も印象的なのはハリー(オーソンウェルズ)がホリーに話す、プラーター公園の観覧車の乗降口でのセリフだ(僕はバックパッカーをしてた時に、これに乗りました(自慢))。
字幕ではもっと簡潔な表現だったと思うが、僕の意訳で失礼します。
↓
「イタリアは、戦争や虐殺が絶えないボルジア家圧政のわずか30年間でミケランジェロやレオナルドダヴィンチ、そう、ルネサンスを生み出した。しかし、スイスはどうだ。民主主義と平和の500年の慈愛に満ちた歴史は一体何をもたらしたのか。鳩時計だ。」
これほど教養と皮肉に満ち溢れた、そして対比も完璧なセリフが実は、オーソンウェルズのアドリブだと言われている。
30年 vs 500年
戦争と虐殺の圧政 vs 民主主義と平和
ルネッサンス vs 鳩時計
(多くの人はルネサンスというとメディチ家を思い出す人は多いと思うが、ボルジア家が「?」という人は、塩野七生さんの「チェーザレ・ボルジア或いは優雅なる冷酷」を読んでみてください。)
荒廃したウィーンでの犯罪行為を、まるで煌びやかな芸術をもたらす世の習いだと肯定するかのようなセリフ。
しかし、そうだろうか。
クリムトもエゴン・シーレも崩壊寸前の19世紀末のオーストリア=ハプスブルク帝国にあって、退廃をもアート作品のテーマとし、そんな栄光も既に遠い過去のものになっていたではないか。
そう、これにはきっと逆説的なメッセージがあるのではないのか。
ミケランジェロは、ローマ・カトリックの意向に沿った数々の傑作を残した。
システィーナ礼拝堂の天井や壁。「2人のローマ教皇」の会話の舞台だ。
サン・ピエトロ寺院の入って右手にあるピエタは、磔刑から降ろされたキリストはが悲嘆に暮れるマリアの腕の中で瑞々しい肉体を保持して、死からの復活を予感させるというロー・マカトリックの神の物語だ。
しかし、ミラノにある遺作となった「ロンダニーニのピエタ」は人間の物語だ。
あえて荒削りのままにした作品を前方から見ると、死んだキリストを抱え起こそうとするマリアに見えるし、背後から見ると、年老いたマリアをキリストがおぶっているように見えるのだ。
子が亡くなれば親は悲しく、生き返るように祈るだろう。
そして、子は成長して、親を労わるのだ。
ローマ・カトリックの支配の下、宗教的メッセージが強要されるような時代にあっても芸術家たちは既存の価値観に挑戦していたのだ。
芸術は圧政や潤沢な資金が生み出すのではない。
作品を生み出すのは人間だ。
そして、ルネサンスも決して永遠ではなく、バロックに取って代わられるし、その後も、印象派やシュルレアリズム、現代アートと芸術はフロンティアを求めていく。
また、このセリフは現代の独善を逆説的に皮肉っているかのようでもある。
それは、古き良きアメリカを取り戻すとか、分断や特定の価値観だけを後押しするような独善だ。
ハリーがボルジア家のイタリアに想いを馳せても、古き良きオーストリア=ハプスブルク帝国の栄華に想いを馳せても、後戻りなど出来ないのだ。
特定の考え方に固執する独善は滅びるしかないのだ。
「第三の男」のハリーの運命を見ても、それは明らかだ。
この作品には、あのセリフと一緒にそんなメッセージがこめられていると思うのだ。
ところで…(余談)、
映画の名セリフというと、実はこんなに長いセリフは稀で、もっと短い決めゼリフが多い。
先般ファイナルカット版が公開された「地獄の黙示録」のキルゴアの話す「朝のナパーム弾の匂いは格別だ」は好感度はかなり低いが、名セリフとされている。
T2の「I'll be back」や「地獄で会おうぜ、ベイビー」もそうだ。
古いところだと、「カサブランカ」は名セリフの宝庫のように言われていて、男としてカッコいいと思うのが、「昨日何してたの?」という質問に「そんな昔のことは覚えてない」、そして、「今夜会える?」という問いに、「そんは先のことは分からない」と言うやつだ。
カッコいい!是非言ってみたい!
そして、英語のオリジナルと字幕の意訳がどちらも名セリフというのもある。
同じく「カサブランカ」の「Here’s Looking at you, kid」と、その字幕「君の瞳に乾杯!」だ。実に、見事だ。もしかした、英語のオリジナルを字幕が超えてるかもしれない。
だが、この逆もある。
「風と共に去りぬ」のTomorrow is another dayが、「明日は明日の風が吹く」と翻訳されて批判されたのは有名な話だ。明日に希望を抱くセリフが、明日は明日の風とは何事だという批判だった。お気の毒だ。
先般レビューを書いた「薔薇の名前」の最後のラテン語の詩は、セリフではないが、ウンベルト・エーコのちょっとした悪戯心が感じられる。
映画は、このようにセリフに注目して観ても楽しい。
ネットを開くと、映画の名セリフは簡単に検索出来るが、僕は既に絶版になってしまったが、ご逝去された和田誠さんの「お楽しみはこれからだ」シリーズをお勧めしたい。あんなに、愛情の溢れたセリフ集はない。古本屋にはあると思うので、興味のある人は是非。
改めて和田誠さんに合掌。
ホリーのアンナへの恋心、パスポート偽造、アンナのハリーに対する気持...
ホリーのアンナへの恋心、パスポート偽造、アンナのハリーに対する気持ちと気丈な性格、ハリーというサイコパス男を追う少佐がストーリーの中で途切れる事なく作用し続けているのが凄い。話の最後までそれがきいてる。
猫がハリーには懐くっていうアンナの台詞があって猫が出て行き、姿を映さない男の靴をペロペロする。
ホリーが窓辺で部屋の灯りを消して点ける動作をする。アンナの心にハリーしかいないと悟って部屋を出るホリー。
尾行者がいる。ニャンコの鳴き声も。
「出てこい!」
周囲の住民が「うるさいよ!」的な文句をいって灯りをつける。
パッとオーソンウェルズの顔が照されて、部屋の灯りが消えてまたいなくなる。イイ!
後半は本当にわかりやすくて、気持ちがわかり過ぎてしまう説得力ある脚本。少佐はハリーを捕まえる為だけにアンナに接触しただけだからこの展開も納得いくし、アンナのセリフもブレたところが一個もない。ホリーが決断を変えてしまうのも人間くさくて共感してしまう。
ラストもすごく府に落ちる。
映画の教科書のよう。
初めて見たのは「そして誰もいなくなった」との二本立てでした。
濃い~。
戦後のどさくさに紛れて、一儲けを企む輩が入り混じって展開していきます。
白黒だからこそ演出できる影と光のコントラスト。
カメラワーク、有名な大観覧車のシーン、下水道の影。
そして名ラストシーンとしてよく紹介される一本道のロングショット。
どれをとっても文句なしの映像です。 いい意味での教科書のよう。
音楽もずーっと耳に残り、大好きな映画です。
チターの音色
米英仏露の4つに分割されたウィーン。皮肉なことに共通語はドイツ語。クルツ、ポペスク、そしてもう一人は?女も怪しいし、医者も怪しい・・・というサスペンスだ。
キャラハンとキャロウェイ、ハリーとホリー、名前を必ず間違える伏線。三文小説家と貶されたり、いきなりのパーティで英文学の質問ばかりされてさっぱり答えられないマーティンス。結局は友人に利用されるだけされて、それでも優しい彼の生き方も素敵だ。
チターの演奏が東欧の雰囲気を醸し出し、わからない外国語の中での疎外感はアメリカ人らしくないアメリカ人マーティンスに哀愁を帯びさせてます。中盤あたりのカメラワークが猫を使ったり、花の中にカメラを入れたりと実験的で、かなり凝っていることにも気づきました。最初に観たのは小学生の頃で、当時の方が緊張感を味わった。
ラストの枯葉散る並木道は、以降色んな映画で取り入れられている手法ですよね・・・これが元祖なのかは知らないけれど。
いつの時代も
意外な展開
サスペンス映画史上不朽の名作。なるほど納得。 なんとも印象的な音楽...
敬意を表して
分からん
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