劇場公開日 2020年8月21日

「【”君はハリー・ライムのテーマを聴いた事が有るか!そして、複雑な三角関係と友情の果て。”戦争の光と影を、モノクロームの陰影を鮮やかに活かして撮ったサスペンス・ノワールの逸品。】」第三の男 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0【”君はハリー・ライムのテーマを聴いた事が有るか!そして、複雑な三角関係と友情の果て。”戦争の光と影を、モノクロームの陰影を鮮やかに活かして撮ったサスペンス・ノワールの逸品。】

2024年11月27日
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鑑賞方法:VOD

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<Caution!内容に触れています。>

ー ご存じの通り、第三の男のツィター演奏によるメインテーマはハリー・ライムのテーマとも呼ばれている。そして、1949年公開のこの映画のテーマソングは、多くの人に愛されている。
  だが、内容は軽やかなテーマソングとは逆に、サスペンスミステリーであり、映画としてはモノクロームの光と影、特に夜の壁面に映る人影の使い方や、オーソン・ウェルズが演じるトラックにはねられ死んだ筈のハリー・ライムが自分が呼び寄せたアメリカ人作家の友人ホリー・マーチンス(ジョゼフ・コットン)に、夜、暗闇の中から顔を表し、ニヤリと笑うシーンは絶品である。
  今作では、序盤、中盤とハリー・ライムの恋人で、オーストリアのパスポートを偽造していたアンナに、淡い恋心を抱くホリー・マーチンスの姿が、ラストに効いているのも良い。
  更に、彼の身代わりとなり墓に収められていた行方不明になっていた粗悪品のペニシリンで一儲けしていたクルツ男爵やポペスコと同じ”ジョセフ・ハービン”の姿が見つかり、彼が粗悪品のペニシリンを一瓶70ポンドで売っていたために多くの人が犠牲になった事実を知ったホリー・マーチンスが、観覧車でハリー・ライムと会い、彼が戦争のために非情なる男に変わってしまった事を知るシーンも、印象的である。
  そして、ホリー・マーチンスが警察と共にオーストリア、ウイーンの地下下水道でハリー・ライムを追うチェイスシーンも、見応えがある。
  警察に撃たれ、地上に出ようとするも鉄の格子が開かずに指だけ藻掻くように動かすシーンのショットも見事であり、その彼を見つけたホリー・マーチンスに向かい頷くハリー・ライムの表情と、鳴り響く銃声だけを流す手法も、コレマタ見事である。ー

<そして、空港に送って貰う途中だったホリー・マーチンスが、オーストリアのパスポートを偽造していたアンナがウイーンから去る姿を見て車を降りて待つも、アンナは彼の事を一顧だにせずに、真っ直ぐに枯れ葉舞う一本道を歩み去るラストシーンも見事である作品である。
 今作は、サスペンスミステリーでありながらも、ホリー・マーチンスとハリー・ライムの友情や、恋人を失いつつも気丈に振る舞うアンナの姿が品性高く描かれた逸品なのである。>

NOBU