「先見の明と言えてしまうことのおそろしさ。」ソイレント・グリーン 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)
先見の明と言えてしまうことのおそろしさ。
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2024年の現時点で52歳の自分が2歳だった頃に公開されたSF映画がいまリバイバル公開される意味を、予言的な作品だったからと言うのは簡単だが、食糧難、環境破壊に生きることへの絶望感というこの物語のモチーフがいまも切実なのだとしたら、一体われわれ人類はこの50年なにやってきたんだって話ですよ。歴史は繰り返すとか、人間はいつの時代も同じとかしたり顔で言うのは簡単だが、われわれは物語を物語として消費するだけで、マジでなにも受け取ってこなかったか猛烈なスルー力を発揮してきたんだな、ということになる。
とはいえ素晴らしい傑作であることは、テーマ性を脇においても色褪せていないことからも間違いないのではないか。この映画に漂う徒労感、虚無感、もう引き返せない世の中への諦念と、それに抗おうとする人間の無力さが、SFミステリーという体裁を採りながら、物語以上に映像からバシバシと感じられる。いまとなってはこの映画の「ホーム」で死ねて他人のお食事になってお役に立てるなら、悪くない人生じゃないかとすら思ってしまうが、そう言う自分の老いに抗うためにも、最後のチャールトン・ヘストンの叫び声を脳内に響かせておきたいと思います。
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