劇場公開日 1967年10月4日

「高まっていく緊張感!見事なプロパガンダ」戦艦ポチョムキン neonrgさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5 高まっていく緊張感!見事なプロパガンダ

2025年9月5日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

最初は戦艦内部という閉鎖空間で、士官(貴族的な立場)と兵士(平民的立場)の対立から物語が始まります。上官たちは食料すらまともに供給しない横暴な存在として描かれ、観客は自然と兵士たちに共感する構造になっていました。その反乱の動きが街の人々へと広がり、さらに国家的な規模へと拡張していく展開は、プロパガンダ映画として観客を巻き込む力を強く感じました。

特に有名な「オデッサの階段」のシーンは圧巻でした。乳母車が階段を落ちていく場面は、後のデ・パルマ『アンタッチャブル』にもオマージュとして引用されており、映画史における象徴的瞬間だとあらためて感じました。

また、後年加えられた赤い旗の着色は象徴的で、黒澤明『天国と地獄』の赤い煙とも響き合っているように思いました。モノクロの中で赤だけが強調されることで、革命や罪といったテーマが観客の目に焼き付く効果を生んでいました。

鑑賞したバージョンには音楽が付けられていて、カットのテンポと音楽のBPMがシンクロしながら徐々に加速していく流れが非常に心地よく、編集の力と相まって緊張感を高めていました。特にクライマックスでは敵艦隊と戦闘になるのかと観客を不安にさせながら、実は同じ革命軍で和解するという展開が用意されており、緊張から解放される安心感を与えてくれました。

全体を通して、プロパガンダ映画でありながらも、風呂敷を広げすぎずに、しかし小さくまとまりすぎない絶妙なバランスで「革命が正義であり、それが広がっていく」という物語を描き切っていたと思います。編集による感情操作の見事さとともに、観客を強く引き寄せる映画であると感じました。

鑑賞方法: Amazon プライムビデオ (SD画質)

評価: 88点

neonrg