「落差に思わず苦笑」Z 因果さんの映画レビュー(感想・評価)
落差に思わず苦笑
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敏腕検事が極右団体と癒着した官憲組織と相対するポリティカルフィクション。議員暗殺のあたりまではシリアスなトーンで物語が進んでいくが、後半になると軽妙なブラックコメディのきらいが強まっていく。検事が警察組織の上官を次から次へと謀殺容疑で起訴していくシーンはカタルシスと諧謔味たっぷりだ。しかし検事の働きも虚しく、ラストでは無惨にも反体制側の人々が投獄され、反対に警察上官らには何の処罰もなかったというニュースが流れる。ニュースを読み上げるのは反体制側に寄り添った取材活動に取り組んでいた男性記者だった。すると途中からニュースを読み上げる人物が女性に変わり、男性記者もまた処罰を受けたことが明かされる。検察たちの快刀乱麻を断つがごとき大立ち回りも、結局のところ官憲組織の横暴には力が及ばなかったのだ。シリアスからコメディへと非現実化されつつあった物語は、ここへきて唐突に現実へと引き戻される。あまりの落差に思わず引きつった笑いが浮かんでしまった。
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