聖なる酔っぱらいの伝説のレビュー・感想・評価
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不思議なエルマンノ・オルミ監督作
レプリカントのイメージが強いルトガー・ハウアー主演、『木靴の樹』のエルマンノ・オムニ監督作ってどんな映画?……と思ったら、ささやかな奇跡が起こる不思議な映画だった。
セーヌ川の橋の下に住む飲んだくれの浮浪者アンドレアス(ルトガー・ハウアー)は、見知らぬ老紳士から200フランを借りる。それ以来、偶然に仕事が見つかったり、元カノと再会したり、若いダンサーと恋したり、悪友と再会したり……と不思議な出来事が続く。
浮浪者は老紳士と約束した「日曜日のミサの時に、聖テレーズのいる教会=バティニョル教会へ行って、テレーズに200フラン返すこと」を果たそうとするが、なかなか出来ない。このあたりは「すべてが上手くはいかないんだよ」というエルマンノ・オムニ監督の気持ち表現なのだろうか。
アチコチでシーンの見事さが光るのだが、序盤の「ルトガー・ハウアーが見るからに寒そうな所で食べる食事から“湯気”が出ている場面」が印象的。
2枚組DVDで観たが、本編は「イタリアでリマスターされた【イタリア語吹替え版】」、特典DVDは「日本公開時の英語バージョン(一部フランス語)」であり、英語バージョンではルトガー・ハウアーの生の声が聞けるので個人的には好み。
ふんわりした気持ちになる映画だが、若いダンサーを演じたサンドリーヌ・デュマがとっても可愛くて加点したくなる気がした…(笑)
弱者を救える社会であって欲しい
ルトガー・ハウアーがどうしようもないクズの酔っ払いを見事に演じている。
それにしても、クズだ、人の施しや、偶然手にしたお金はすべてお酒に消えていく。
挙句、えらそうにタクシー代やら、食事代をおごる始末。
自立しようという意識なんて、これっぽっちも見せない。
でも、そんな弱者を受け入れる社会がこの時代にはあった。
ちゃんとしたくても、できない人がいる。
ノーブレスオブリージュ。持てる人は、持たない人を救う責務がある。
ルトガー・ハウアーは幸せに逝った。すべての酔っ払いに美しい死を与え給え。
ちゃんとしたくても、ちゃんとできない人がいる。そういう人たちを見捨てない社会であって欲しい。
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