聖なる酔っぱらいの伝説のレビュー・感想・評価
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不思議なエルマンノ・オルミ監督作
レプリカントのイメージが強いルトガー・ハウアー主演、『木靴の樹』のエルマンノ・オムニ監督作ってどんな映画?……と思ったら、ささやかな奇跡が起こる不思議な映画だった。
セーヌ川の橋の下に住む飲んだくれの浮浪者アンドレアス(ルトガー・ハウアー)は、見知らぬ老紳士から200フランを借りる。それ以来、偶然に仕事が見つかったり、元カノと再会したり、若いダンサーと恋したり、悪友と再会したり……と不思議な出来事が続く。
浮浪者は老紳士と約束した「日曜日のミサの時に、聖テレーズのいる教会=バティニョル教会へ行って、テレーズに200フラン返すこと」を果たそうとするが、なかなか出来ない。このあたりは「すべてが上手くはいかないんだよ」というエルマンノ・オムニ監督の気持ち表現なのだろうか。
アチコチでシーンの見事さが光るのだが、序盤の「ルトガー・ハウアーが見るからに寒そうな所で食べる食事から“湯気”が出ている場面」が印象的。
2枚組DVDで観たが、本編は「イタリアでリマスターされた【イタリア語吹替え版】」、特典DVDは「日本公開時の英語バージョン(一部フランス語)」であり、英語バージョンではルトガー・ハウアーの生の声が聞けるので個人的には好み。
ふんわりした気持ちになる映画だが、若いダンサーを演じたサンドリーヌ・デュマがとっても可愛くて加点したくなる気がした…(笑)
弱者を救える社会であって欲しい
お酒で紛らわす人生・・
44歳で亡命先のパリで病死したオーストリアのユダヤ人作家ヨーゼフ・ロートの自身の想いを吐露したかのような小説(1939年死後出版)の映画化。暗い過去を背負いセーヌ川の橋の下に暮らすホームレスに起きる奇妙な出来事を走馬灯のような回想を交え淡々とつづってゆく。悪人でもないし粗野でもないので感情移入できなくはないがホームレスの境遇を思うと心静かと言う訳にはいかない。異国の地で孤独で酒に溺れ若くして死んだ原作者の苦悩が作品ににじみ出ているかのようで気が重くなる。迷える羊に神は何度となく手を差し伸べるが真の救いは御許に召させることだったとは・・。ベネチア国際映画祭(1988年)で金獅子賞をとったくらいなので観る人が観れば違うのでしょうが、楽しい気分にさせてくれるお酒ではないことだけは確かです。
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