「奇才プロヤス、25歳の頃の才気爆発作」スピリッツ・オブ・ジ・エア ぐうたらさんの映画レビュー(感想・評価)
奇才プロヤス、25歳の頃の才気爆発作
唯一無二のキャリアを築いた映画監督の長編第一作を紐解くと、後の作品へつながる胚芽が数多く見つかるもの。個人的に「最近のアレックス・プロヤスは元気ないなあ」と感じていた私にとって、近年デジタル・リマスタリングされた88年制作の本作は、限りある予算と条件を駆使して作られた、青臭くもビリビリ来るほどの表現欲求あふれる「野望の塊」のように思えた。「ダークシティ」や「ノウイング」などの商業映画に比べると構成面で退屈な箇所はあれど、しかし注目すべきはこの映像感覚だろう。何もないだだっ広い荒野と一軒家の対比、刻々と変わりゆく光と影、遠くにそびえる壁のような山々、そこに向けて羽を広げる奇妙奇天烈な男たちの姿など、見ているだけであまりにその絵力が強くてもうグイグイと引き込まれる。リアルタイムで鑑賞した人々が「こいつは必ず化ける!」と太鼓判押したのも頷ける。持ちうる全てを注ぎ込んだ才能の見本市のような作品だ。
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