「男の友情を描いたロードムービー」スケアクロウ ノブさんの映画レビュー(感想・評価)
男の友情を描いたロードムービー
午前十時の映画祭で鑑賞してきました。
ジーン・ハックマンとアル・パチーノ共演のロードムービー。
実はテレビを含め全くの初見だったのですが、いや~本当に見て良かったです。
男の友情というか、現代にはない熱い絆のようなものが感じられました。
ジーン・ハックマン演じるマックスは喧嘩っ早くあまり関わりたくないと思う人物ですが、一方アル・パチーノ演じるライオンは人の良い人物で、この全く性格の違う二人を見せるオープニングが秀逸でした。
風が吹きすさび砂塵が舞う平原でヒッチハイクをする二人。人を信用しないマックスはライオンに声をかけられても無視。車が来れば我先にと走り、ライオンには止まってろと自分のことしか考えない。でもライターが切れタバコを吸えないマックスにライオンは親切にも最後のマッチを提供し、交流が芽生える。
出所してピッツバーグで洗車屋を始めようとするが、その前に妹に顔を見せに行くマックス。だがそこでもまた喧嘩っ早い性格が災いし、二人とも1ヶ月収監されてしまう。ライオンは巻き添えみたいなものだが、マックスはライオンのせいにして口も利かない。困った男だが、ライオンが手酷く痛めつけられたと知るや仇をとってくれる頼もしい一面もある。ヤクザのようでもあるが(苦笑)
一方、マックスと一緒に洗車屋を始める前に、何年かぶりにデトロイトに戻り子供に会いに行くライオン。子供がお腹にいるときに妻を置いて家を出たので子供が男か女かも知らない。それでどちらでも喜ぶようにランプのプレゼントを持ち歩いている。事前に妻に電話をすると断られるかもしれないという理由で電話せずに直接会いに行ったのに、結局怖じ気づいて家の近くから電話をするライオン。そして妻が既に再婚したことを知る。そして本当は男の子がいるのに子供は流産して死んだ、もう二度と電話してこないでと告げられる。
ここからのアル・パチーノの演技がすごかった。マックスには子供は男の子だったと嘘をついて喜び、明るく振る舞うライオン。しかし、精神が破綻してしまったライオンは他人の子供を抱えたまま噴水に入っていく。
すっかり変わり果てたライオンを助けようとするもどうすることもできないマックスは駅でピッツバーグ行きの往復乗車券を買うのに一苦労。靴底に隠していた金でなんとか乗車券は買えたが、靴がおかしくなったのか靴を打ち続けて映画の幕は下りる。
マックスもライオンも決して悪い男ではないのになあ。
なんか切なかった。
確かに名作でした、いや傑作です。
トミーさん、コメントありがとうございます。
車のボンネットの上にポツンと忘れ去られたボロボロのプレゼント。それまで常に忘れずに持ち歩いてたのに…。すべてを物語る演出が素晴らしいですね。
トミーさん、共感&コメントありがとうございます。
あの場面からアル・パチーノの独断場でしたね。
ライオンのおかげでマックスも少しはうまく立ち回れるようになって希望のあるエンディングに向かうかと思いきや、アメリカンニューシネマらしい悲劇的なラストで、ライオンの過去の報いといえばそれまでですが、子供の存在だけを心のよりどころにしていたライオンの変わり果てた姿が切なかったです。
talismanさん、共感&コメントありがとうございます。
本当に午前十時の映画祭のおかげです。
お人好しというアル・パチーノにしては珍しい役柄でしたが、最後にそれまでとは一変して何かにとりつかれたような演技がすごかったです。
Mさん、共感&コメントありがとうございます。
確かに唐突に終わる感はありますが、二人の旅は終わったので一応完結はしていますね。まさかの展開で切ないラストでした。