劇場公開日 1998年12月19日

「稲妻に撃ったのはコーヒーショップの彼」ジョー・ブラックをよろしく 昭和ヒヨコッコ砲さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0稲妻に撃ったのはコーヒーショップの彼

2024年3月4日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

人の営みを知識としてしか知らない死神が、人として過ごすうちに徐々に人としての機微を得ていくお話。
「限られた時間しか無い」という状況であるが、大富豪パリッシュと死神ジョーの感情の対比があり、人生の幕引きを意識することもなかった上映当時は私の視点にはジョーの感情しか存在しなかった。
40を目前にした今、パリッシュの視点を僅かに得て、彼の葛藤やそれを飲み込んだ潔さにもとても感じるものがあった。
ファンタジーを混ぜながらも人生観や今をいかに生きるのかを考えさせられる作品。
脇役である姉アリソンやその夫クインスの存在感もしっかりとあり、それぞれの人生を感じさせる。
その上で彼らの人生観がパリッシュやジョーに披露されるシーンは結構グッと来る。

180分という長い上映時間に対して、その長さを感じさせない没入感がある。
180分あっても尺が足りないきらいあり。
ハンサムの処理の仕方とかサクッとしてるし、アリソンへのフォローはほぼ無いのが少しさみしいとは感じた。

本筋としては死神ジョーの視点が多く、展開が進んでいくごとに人間性を獲得するのにつられて彼に感情移入しがちだけど、スーザンの気持ちはずっとコーヒーショップで出会ったハンサムに向いているのであって、2人のロマンスは実のところ頭から最後まで行き違っている。
死神ジョーがハンサムの体を借りた時点で2人は出会ってたからこそ、このラブロマンスは始まったわけで、かと言って他の人であればラブロマンスは始まらない。
どちらにせよ、死神ジョーにとって負けることが決まったロマンスだったわけで…これは神の立場を利用した身勝手さの因果応報なのかも。

昭和ヒヨコッコ砲