「今も当然のごとく変わらない輝きを放つ、名作だと思います。」少林寺 who am iさんの映画レビュー(感想・評価)
今も当然のごとく変わらない輝きを放つ、名作だと思います。
何故今少林寺?と疑問に思わないではなかったですが、ジェット・リーのポスターのかっこよさに惹かれて観てきました。
結果、あのポスターのかっこよさそのままです!素晴らしい!
もちろんあのポスターの背景みたいに映像が加工されて現代的になってるわけじゃないですが、ジェット・リー(当時はリー・リンチェイ)のあのポーズ、決め顔、時空を超えてかっこいい!
ただそれはジェット・リー単品ではなくて、映画全体がそうだと思います。
風に揺れる草の穂ひとつ、木々の間から差し込む陽の光ひとつとっても、思わずハッとさせられるような輝きがあります。
実は単純に映画としても、全編すごくしっかりしてるんですよね。
カンフーアクションを魅せるためのカメラワーク、カット割りは完璧。乱闘シーンのちょっと映る背景にもちゃんと戦いが展開されていたりして、手抜きがない。
荘厳な滝や岩山、岸壁に掘られた巨大な仏像やなんかをそのまんま使った(もちろんCGなんかであるわけもない)ロケーションも素晴らしく、単純に映像として美しいです。
そしてもちろん、ジェット・リー。とりあえず生身の人間としては、これ以上ありえないような完璧な動き。映画の魅力の一つとして、俳優の所作を映像で見て楽しむというのがあるとすれば、これは間違いなく見る価値があります。
馬を駆る姿であんな疾走感のある姿、他に見たことない!
ストーリーも、シンプルで個性あるキャラクター、無理のない話の流れ、ユーモアのセンスもあって、ちゃんと見て楽しいものになっている。これは掛け値なくこの映画の魅力であって、今見ると古くさいとか、そんなことをここから見てとる必要は、全くない気がします。
描かれているものは、要するに理不尽な暴力への抵抗です。大事なものを守るために戦うわけです。その大事なものが何か、登場人物を見てると自然に伝わってきます。
日々の暮らしの中の笑顔、よりよい存在になり、よりよい生活を送りたい。そんなささやかな思いを守るために戦うのです。それを踏みにじろうとする無粋なものに抗って。
端的に言うと、娘さんが連れてる羊の群れを襲って子羊の首を締めあげたり、その娘を連れ去って酒に酔ってセクハラしようとするやつらに対してなんですけど、、これって実は、最近も世間をにぎわせてるニュースと、たいして違わないですよね?
少林寺の館長が、あいつを助けたために面倒に巻き込まれた、という部下に言うのですが、
「小虎は私の弟子だ。助けるのは当然だ。何十年も御仏に仕えていながら、まだわからないのか?」
結局我々だって、2022年の今になったって、未だにわかってないんじゃないでしょうか!?
名作ってのは、普遍的なものが、時代の熱気とともに映像に刻みつけられて、それが時を超えて胸を打つ、そういうものじゃないかと思います。その意味で、この映画は単なるカンフー映画としてだけでなく、はっきりと映画史に名を刻む名作なんじゃないかと思います。
今劇場で見る価値十分にあります!