「彼が人生をシャイン!と思えていたらいいな」シャイン 映画鑑賞初級さんの映画レビュー(感想・評価)
彼が人生をシャイン!と思えていたらいいな
1997年公開、実在のデイヴィッド・ヘルフゴッドというピアニストの半生を元にしたお話
デイヴィッドの実姉の話では実際の主人公の父親は劇中のような暴君ではなかったらしいことや、第二次大戦中はポーランドではなくオーストラリアにいたなど、すべてが実話ではないことに少し安堵できましたが、実際のことは本人に聴かないとわからないことですね…
家父長制の悪い影響が強く出ている話だと思いました
父親ピーターが家族に対してやっている行いや言動はストーカーやハラスメントをする人、悪い政治家のそれと同じだなぁ
“一方的”で“自己満足”の愛
自分の父親にされて傷ついたことを自分の代で改めるのではなく、我が子にも強いる心の幼い実父ピーター
自らを俯瞰できず、黙って子を見守れず、過干渉で支配欲が強いのは自信のなさの表れでもあると感じる
冒頭のコンクールでは息子が正当に評価してもらえないと決めつけると評価前に帰宅
お前の価値をわかるのは俺だけだ!俺だけがお前の幸せを願ってるんだ!みたいなことどこかで言ってましたね…
逆に息子が世間に認められると息子の人生を踏みにじっても全否定
佳き理解者で支援者だったキャサリンと過ごす時間は観ている側にも救われるものがあった
実父の異常性に気付かされたキャサリンの父親のエピソードは、描き方が少しシンプルかなとは思ったけど、デイヴィッドにとっては人生を左右する気付きのシーン
最後に父親がデイヴィッドの元を訪れてメダルをかけたときに、初めて息子からとどめになる言葉を受けて無言で立ち去る場面では絶望を表情から感じたけれど、そうでなくてお父さんが自分のしたことに気付いてくれてたらいいなぁと思った
攻撃してくる人ってちょっと反撃されるとシュンとなるのはどこでもおなじなのね
父親の台詞
『父さんは鉄の男だ!この世は強い者が生き残る弱肉強食、虫ケラは潰されて死ぬ』
父さん哀れだなぁ
その前に斧で薪を割るシーンも、この先デイヴィッドの将来に続く道を力ずくで断絶する行動をよぎらせる
アメリカの音大招聘を諦めさせたときの台詞
『父親を憎むのは恐ろしいことだ。人生は残酷だ。音楽だけが変わらない友達だ。その他のものはいつかお前を裏切る。私を憎むな。私を憎むな。人生は残酷だ。それに耐えて生き残るのだ。私の愛は誰よりも強い。他人は信用できん。』
これらも父親の疑いのない本音なのだろう
ずっと味方がいなくて、不安で自信のないのが伝わりすぎる
だからといって子供を犠牲にしていい権利なんて父親にはない
父親の教えと自分の希望、父親と世間とのズレの底無し沼に押し込められていればデイヴィッドのように心も砕かれるでしょうね
自分の心を守る、満足させるために家族を縛り付けて支配する
独裁者ですね…
もしかしてダンサーインザダーク的なストーリーか?なんて思って小切手のシーンではもしかして盗まれちゃうの!?とヒヤヒヤしました(笑)
父親から去ったあと病に冒されながらも無邪気さを失わなかったこと、その無邪気さから周囲に恵まれてピアノが生業になったことは本当に良かったです!!!
最後の占星術で結婚を決めた奥さん、なんてユニーク!!!
じわじわ効いてくる映画
観ることができて良かった1作でした