劇場公開日 1990年2月17日

「おっさんになって見直すとちょっと残念なトム映画」7月4日に生まれて しんざんさんの映画レビュー(感想・評価)

2.0おっさんになって見直すとちょっと残念なトム映画

2024年7月20日
PCから投稿

トム・クルーズは、オレの尻が青いときは、髪形やしぐさを真似てみたり、オレがおっさんになって尻が黒くなっても、休みの日だとか、家族が外出した時とかなんだかポカンとした時、ひとり繰り返し鑑賞する映画スターとして、彼の出演作にはお世話になっている。

出演作全部をフォローするつもりはないが、デ・ニーロなんかよりかはいつだって憧れをもって臨める存在である。以前「コラテラル」のレビュー時に、彼の「作品」ベストと「トム」ベストのそれぞれ5位まで挙げたが、時によってやはりコロコロ変わるものだ。

5位・インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア
4位・デイズ・オブ・サンダー
3位・M:I-2
2位・コラテラル
1位・ナイト&デイ

が「トム」ベスト。彼の転機、ともいえる彼の出演作。順番はどうでもいい。

5位・コラテラル
4位・アイズワイドシャット
3位・マイノリティ・リポート
2位・オール・ユー・ニード・イズ・キル
1位・宇宙戦争

これが今のオレの彼の「トム作品」ベスト。「宇宙戦争」はオレの無人島1位でもある。
(「宇宙戦争」は「トム」ベストに入れてもいいほど、演技も素晴らしい。)

そして3位に「マイノリティ・リポート」が入ったからというわけではないが、すっころげたのが本作。

「7月4日に生まれて」




公開1990年といえば、オレが最もきれいな目で映画を見ていたころ。そして「トップガン」、「ハスラー2」、「レインマン」といった作品群を経て、オリバー・ストーンとクルーズのキャリアアップのニーズが合致したかのように生まれた本作。

公開当時、受験に向けて、確か最後の楽しみとして本作を観たため、思い入れは他のトム作品よりも大きい。

「サルバドル」、「プラトーン」、「ウォール街」(その前は、「ミッドナイト・エクスプレス」、「スカーフェイス」、「イヤー・オブ・ザ・ドラゴン」の脚本家(どれも超好物))のストーンのもと、チャーリー・シーンではなく、クルーズが起用。

見納めとして、当時のベトナム戦争ものが大好きで、クルーズも憧れの存在故、オレとしては最高だったわけである。(余談だが、そのため、この直後のベトナム戦争ものの快作(怪作)の「ジェイコブズ・ラダー」を30年見逃すことになる。)

ノリに乗った二人による作品であることは周知のことで、実際興行も大成功。

そうして今に至り、DVDや配信で何度も鑑賞している本作。しかし、歳を追うごとに、オレの中の評価は下がってきている。

確かにクルーズ自身の最重要作品の一つになるだろうが、問題は作品自体にある。思い入れ補正取っ払うと、ちょいちょいと物申したいことがある。

1)ぶつ切りすぎる編集

上映時間145分は決して短くはないが、盛沢山のエピソード、場面場面で泣かせようとするシーンばかりを切り取って貼ったかのようで、ダイジェスト感が強い。

主人公の心情に変化の流れが感じられず、叫び回ったあげく、いつの間にかつきものが取れたような顔になって終わる。クルーズの熱演もこれでは台無し。

国のために戦ったのに、国は応えてはくれなかった、というジョン・ランボーと同じ主張にはなるのだが、こっちは泣き言にしか見えない、のが悲しい。戦地に赴くのは自分の意志(だけではないが)なのに、「泣き言をいう若者」の波乱の人生、とあえて言えなくもないが、同情しにくいのはひとえに編集のまずさが原因。オスカー編集賞受賞なんて、どうでもいい話。

2)感傷的なウィリアムズの劇伴

ずっとこればっか鳴っているため、ダイジェスト感、泣かせ感に拍車がかかる。これもオスカーノミネート。そのこと自体はこれまたどうでもいい話。

3)退屈な画

原作者の自伝および脚本であるためか、クルーズ出ずっぱりな構成は、そうならざるを得ないかもしれないが、結果クルーズ出てればそれで良し、という画。特に戦地での画が貧相。これは編集含め、予算も影響しているかもしれないが。

ラストはエキストラを増やしての再撮影らしいが、カメラは相変わらずクルーズを離れないのでその効果は薄い。

本作はクルーズとストーンのタッグという、当時としては、もうこれで映画なんて見なくていい、と思わせてくれる作品として登場し、同じ空気を感じた人が懐かしんだり、クルーズのいろんな顔をずっと画面で見ていたいという人には勧められる。(後者でいうと、「ナイト&デイ」や「オール・ユー・」の方がイイけどね)。

もう少しいうと、ストーンのベトナム戦争3部作としての位置づけでは「プラトーン」、「天と地」の間として、テーマはキチンと定位置にはあるので、その2作品もあわせて観ると、ストーンの力み具合いなども感じられて、より楽しめる。

という意味では、その当時が最も楽しく鑑賞できる映画だったということ。

追記

最後にスゴイ好きなところ。

デフォーとクルーズの唾吐き合いの「車いす」喧嘩が最高。言い争っている内容含め、子供の喧嘩。

これだけは、映画史に残る名シーンとしてオレに刻まれている。

しんざん