「トムクルーズ主演で描くノスタルジック調な反戦映画」7月4日に生まれて Kazu Annさんの映画レビュー(感想・評価)
トムクルーズ主演で描くノスタルジック調な反戦映画
オリバー・ストーン監督により1989年製作米国映画。
ベトナムで障害者となり米帰国後、反戦活動家となったロン・コビックによる著作が原作。
高校卒業後ベトナム出征時の主人公ロン・コビック演ずるトム・クルーズの大いなる愛国心と高揚した気分が、何とも痛ましい。共産主義から米国民のひいては愛する家族の自由を守るとの大義名分が、遠い異国の戦争だけに、今となってはあまりに虚しい。騙されるのはいつも知識・情報・知力に乏しい庶民。今ウクライナとの戦争に向かわされているロシア兵士も同じであろうか?
あらためてハンサムの典型と思ったトム・クルーズだが、随分と熱演していて多少驚いた。
ベトナムから下半身不随で帰ってきた悲しさ・やりきれなさ(子供も作れない)、ひいては戦争の若者に与える理不尽さが、うまく物語られていて感心させられた。
そう、指示を出す政治家は少しも傷つかないが、行かされた兵士は赤ん坊含む住民殺害の罪に慄き、味方兵士の誤射殺に心が壊れ、一生動かない下半身に打ちひしがれる。遠い昔も、当時も、今も変わらない戦争の酷い真実。
まずは学生から始まる反戦運動、それを暴力的に阻止する機動隊、その騒乱に巻き込まれる主人公。反戦運動は広がり、ベトナムからの帰還兵の一員として車椅子で運動に参画するトム・クルーズ。最後は大群衆を前にしたスピーチをする直前で映画は終わる。
理不尽な戦争を始める政権、その戦争を更に拡大させ継続する政権、戦争をズルズルと続ける政権、歴代政権を批判する映画を、スター俳優で制作しアカデミー賞までゲットしてしまうオリバーストーンには感心させられる。ただ何処か、反戦運動も含めて、米国的ノスタルジックな要素を絡めていたせいか、十二分には自分に響かないところもあった。
原題Born on the Fourth of July、配給ユニヴァーサル映画=U
原作ロン・コビック、脚本オリバー・ストーン、ロン・コビック
製作A・キットマン・ホー、オリバー・ストーン、撮影ロバート・リチャードソン、美術ブル・ルベオ、音楽ジョン・ウィリアムズ、編集デビッド・ブレナー、字幕戸田奈津子。
トム・クルーズ、ブライアン・ラーキン(ナイトメア・アリー等)、ウィレム・デフォー、
キーラ・セジウィック、レイモンド・J・バリー、ジェリー・レビン、フランク・ホエーリー、キャロライン・カバ。