「雰囲気は楽しめるおおらかな時代の犯罪映画」死刑台のエレベーター(1958) Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)
雰囲気は楽しめるおおらかな時代の犯罪映画
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総合:65点
ストーリー: 55
キャスト: 70
演出: 70
ビジュアル: 60
音楽: 75
頭の足りないチンピラと花屋の売子の衝動的な犯罪は別にしても、誰が見ているかわからない事務所の建物の外で、外壁をロープでよじ登って完全犯罪を目指そうというこの計画は本当に大丈夫なのか。この時点でもう完全とは程遠いようだ。だがそんなことは問題なく彼は計画を進め、そして映画の本筋の物語もまた彼の完全な計画を狂わせながら進んでいく。
警察は凶器の拳銃や宿泊先のモーテルの指紋すら調べない。犯罪捜査の技術もやり方もいいかげんなのだろう。そしてジュリアンとカララ夫人の仲睦まじそうな一緒の写真があっただけで、あっさりと諦めて刑務所暮らしを想像してしまう夫人。その写真があるからといって、不倫の証拠にはなっても夫の殺人の証拠などにはならないだろうに。犯罪物としては物語は全体として緩い。なんともおおらかな時代だ。現在の映画を見ていると、どうしても粗さが目立つ。それともエレベーターに閉じ込められたことを取り調べで白状したジュリアンが、実は社長殺しのこともついでに白状していたのだろうか。
犯罪物としてみればたいしたことはないけれど、作品の雰囲気はいい。ジュリアンが閉じ込められたことなど知らず、浮気や彼の気が変わったかもしれない疑惑に苛まれながらも彼を信じようとして一途に彼の痕跡を街に探し求める。そんな大人の女の寂しい不倫の話としてみれば悪くない。
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