「黒猫は見た」死刑台のエレベーター(1958) everglazeさんの映画レビュー(感想・評価)
黒猫は見た
愛人の夫の殺害計画が、犯人がエレベーターに閉じ込められた為に、全く違う方向に転がるという話。
元軍人の手馴れた犯罪計画の執行と、泥棒少年の愚かで衝動的な犯罪が対照的でした。
ひとつの犯罪のアリバイを主張すれば、もうひとつの犯罪の容疑がかかるという窮地を描きたかったのでしょうか。
捜査をしても宿泊者の偽名すら見抜けないのに、社長の密室殺人は写真だけで暴けてしまうというのが、腑に落ちません。
犯罪計画としては穴だらけ。そもそもロープを登る時点で目撃されても仕方がない。当時のパリっ子は盗み見なんて野暮なことはしないとでも言うのでしょうか…。
カルチャーショック的な発見:
☆上に行くはずだったエレベーターは、電源が落ちてリセットされると下に行くらしい。
☆パリで明け方に外出していると成人でも補導されるらしい。
☆高速道路は何往復でも出来るらしい。
☆煽られてもベンツをぶつけられても、ドイツ人は怒らないらしい。
☆殺人の実行より教唆の方が罪が重いらしい。
☆フランス人は、犯罪者の烙印を押され投獄されることより、愛する人のいない冷たいベッドで朝を迎えることと老けることを心配するらしい。
加えて反戦メッセージが含まれていますが…
拳銃があったからいけないんだ…って…
いや…引き金を引いたキミが悪いんだよ、
そもそも、車を盗んだキミが悪いんだよ…。
他人のフリしているんだから、尚更タチが悪いよ…。
こんなに絶望感の欠片もない心中があるとは。
呆れ過ぎて何とも思えず(-_-;)。
ベンツに乗っていたがために、巻き添えを食らったドイツ人夫婦が一番災難だったという結果に。
途中までは意表を突いたプロットで面白いのですが、犯罪サスペンスとして観ていると、そんな馬鹿なという流れです。エレベーターでの危ういシーン、殺人のシーンなども、現在からすると大変幼稚に見えます。音楽もMiles Davisと言われてみればカッコいいのかも知れませんが、よく分かりません。
一晩中求めた愛は写真の中に。
約束の時間になっても姿を現さない愛人を探しながら深夜をさまようJeanne Moreauの、哀愁漂う横顔を堪能する作品でした。