劇場公開日 1994年12月10日

「かつてゴスや厨二病のケが(少し)あった自分が歓喜した作品であり、クリストファー・ウォーケンの「人間ジャナイ感」を堪能できる一本。ヴィゴ・モーテンセンも出てるよ」ゴッド・アーミー 悪の天使 盟吉津堂さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5かつてゴスや厨二病のケが(少し)あった自分が歓喜した作品であり、クリストファー・ウォーケンの「人間ジャナイ感」を堪能できる一本。ヴィゴ・モーテンセンも出てるよ

2025年3月11日
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鑑賞方法:DVD/BD

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興奮

クリストファー・ウォーケンはどの映画でも多少なりとも人間ジャナイ感を漂わせていると思う。唇が薄い爬虫類顔というのもあるし、冷酷な人間を演じるのがメチャクチャ上手いということもそう感じてしまう原因だろう。

『007/美しき獲物たち』で演じた、元ナチスの科学者による実験で生まれた異常な天才ヴィランとか、『スリーピー・ホロウ』の首なし騎士などは人間ジャナイ感を漂わせている役柄の最たるものである。
実は舞台のミュージカル俳優出身で歌って踊れる人でもあり大の猫好きでもある。
カワイイ。ギャップ萌えってヤツだ(笑)。
でも、だからといって彼が演じる冷酷なヴィランたちの人間ジャナイ感がいささかも減じるものではない。

この映画もクリストファー・ウォーケンの人間ジャナイ感を堪能できる一本である。
彼が演じるのは人類を絶滅させようと企む大天使ガブリエルである。人間ジャナイに決まってる。

大天使ガブリエルともあろうものが、なんで人類を絶滅させようとしているのかというと、神が人間だけを愛していて天使を愛してくれないから。人間に嫉妬したのである。
もうちょっと高尚な理由とか深遠な理由はなかったのかと思うが、なかったんだから仕方がない(笑)。
でもそれでいいのだ。
結果として嫉妬に狂ったDV男のような下卑たヤサグレ感を持つ凶暴な天使という、今まで見たことがないような面白すぎるキャラクターが誕生したのだから。
このガブリエル、人間のことを「しゃべる猿ども」と口汚く罵ったりしてかなり柄が悪いのであるが、そこはクリストファー・ウォーケン。ヤサグレているだけでなく悪の品格も漂わせていて、とにかくスタイリッシュでカッコいいのだ。
天使映画史上屈指のカッコよさである。

自分は天使や悪魔が出てくる映画が大好きでずいぶん観てるが、人間の格好をした天使や悪魔というのはどうしてもコメディ寄りになってしまうものであり、シリアスなタッチの映画でカッコいい天使が見られるというのは滅多にない。初めて観た時メチャクチャ嬉しかった。

さらに嬉しいことに悪魔もカッコいいのだ。
『ロード・オブ・ザ・リング』のアラゴルン役で大ブレイクする前のヴィゴ・モーテンセンがサタン(ルシファー)を演じている。
登場場面は短いが強烈な印象を残すキャラクターで、こちらも悪魔映画史上屈指のカッコよさなのだ。

シリアスなタッチの映画でスタイリッシュな天使や悪魔が出てくる作品は、この後はキアヌ・リーブスの『コンスタンティン』(2005)まで待たねばならない。
考えてみれば『コンスタンティン』に出てくるガブリエルを演じたティルダ・スウィントンも唇の薄い爬虫類顔で人間ジャナイ感の強い女優だ。『コンスタンティン』に出てくるガブリエルやルシファーも悪くはなかったが、やっぱりカッコよさという点では『ゴッド・アーミー』の方に軍配が上がる。
『コンスタンティン』を好きだという人が日本にどれどけいるか分からないが(笑)、そういう人がいたら『ゴッド・アーミー』は絶対観ておくべき映画である。

繰り返しになるが、この映画に出てくる天使も悪魔もみんなカッコいい。みんなコートの裾をはためかせてカッコいいのだ。
ゴスや厨二病のケが少しでもある人、かつてそのケがあった人なら歓喜する映画。
そうでない人にはまったく無縁の映画。
自分は20代半ばでレンタルビデオでこの映画を観て歓喜した側の人間である(笑)。
この映画の脚本や演出がいささかユルめなのはこっちも百も承知なのだから、ゴスや厨二病のケがない人がうっかり近寄ってきてこの映画にケチをつけるのはどうかやめていただきたい(笑)。
そんな風に切に願ってしまう、自分にとって愛おしい映画である。

盟吉津堂